台湾ポップスのクラスター
流行とは一つの時代のシンボルである。それはすぐに消えてしまう虹のようなものなのか、それとも何万年も輝き続ける恒星なのか。台北流行音楽センターは、行動力をもって流行音楽の生命を伝えていこうとしている。
MRT昆陽駅を出ると、以前は広々としていた土地に、3棟の斬新な建造物が建っている。これが台北流行音楽センターだ。まず目を引くのは陽光を浴びてキラキラと光る山脈のような屋根だ。折り曲がったラインが角度によって異なる表情を作る。この円形の建造物がコンサートホールである。その向かいにある6階建ての巨大な文鎮のような正方形の建物が文化館、もう一つの長方形の建物が産業エリアである。この三大建築物の間はブリッジ(渡り廊下)でつながり、流行音楽と文化産業のクラスターを形成する。「多くのホールは多機能を目的として建てられますが、ここは世界でも珍しく単一の目的で建てられました」と話すのは、3年にわたってソフトとハードを統括してきた準備処の丁度嵐主任だ。
2020年10月に台北流行音楽センターのCEOに就任した呂聖斐は「私は音楽家出身の者として、流行音楽のために役立ちたいと考えています」と語る。小学2年生の時にオルガンに触れた時から音楽に魅了され、小学5年の時には音楽の道を歩むことを決めていたという。「幸運なことに、これまで音楽の道で、自ら仕事を求める必要もなくやってくることができました」と語り、自然の流れに身を任せる。金音創作賞の最優秀演奏賞から最優秀アルバムプロデューサー賞、そして金曲賞最優秀演奏アルバム賞、そして金馬賞受賞まで、呂聖斐はさまざまな役割を果たしつつ、音楽の道を歩んできた。
「専属という目的があるのでより完備したホールにすることができます」と語る呂聖斐は、音楽家としての立場からステージの各種設備に厳しく目を光らせる。「このコンサートホールとその他の中小の演奏空間は、テクノロジーのモデルエリアとなるはずです」と言うとおり、台北流行音楽センターは先端技術をリードする存在となる。「私たちは時代の最先端を走り、世界と歩みをともにしていかなければなりません」5Gの高速大容量、低遅延通信、多数同時接続といった特性を音楽コンテンツ産業に応用する実験の場としても計画を進めている。最新テクノロジーが支えあうことで、パフォーマーが一方的にアウトプットするという従来の形が変わり、観客に新たな体験をもたらす可能性も開かれる。
華やかなステージと完璧な音響は、背後の精密な設備に支えられている。台北流行音楽センターコンサートホールの背後にも「四宝」と呼ばれる重要な設備があり、出演者と観客に忘れられない経験をもたらす。
まず、幅16メートル、高さ10メートルという台湾最大の防音扉は、「閉めさえすれば3日3晩コンサートを続けても近隣から苦情が出ることはありません」という極めて高い防音性を発揮する。科学的に検証された防音効果と、確かな防振構造により、観客が総立ちして踊っても振動が生じることはない。
特注したハイスペックのL-Acoustics K2音響システムは、あらゆるエリアの観客に最高品質の音を届ける。また、強固なマザートラス(吊物機構)は直接1階まで下ろすことができるので、スタッフが高所で作業をする必要はなく、危険を減らすことができる。コンピュータ制御の電動昇降ステージは、昇降の落差が3階近くになり、750キロを載せることができる。
地上5階、地下3階のスペースに設けられた客席は3層に分かれ、快適さと視界の良さを考慮してあり、最大6000人を収容できる。
専門的なビジュアルデザインによって、コンサートホールの客席1階は青緑、2階はオレンジ、3階は青、4回は黄色と、各層が色分けされている。入場者にさわやかな印象を持ってもらい、存分に音楽を楽しんでもらうため、細部にも配慮が行き届いている。