スター占い師
メディアがスター占い師を生む助けをしているのも、最近の占いブームの興味深い現象だ。
テレビの『開運鑑定団』(占い番組)や『命運っておもしろい』といった番組は視聴率も高く、出演の占い師たちは今やスターだ。テレビ出演の経歴を名刺に印刷するのは、占い業界では一般的なことになった。携帯電話やインターネットでも、スター占い師を招いて占いサービスが行なわれるようになった。ファーイースタン・テレコムのI-styleで「515算命王」サービスに加入すると、恋愛運や仕事運、金運といった占いが、ショートメールで送られてくる。また、1回20元で結果が得られる携帯占いもある。台湾セルラーの星座占いは、唐立淇や薇微安、徐紹華といった有名占い師による占いを、音声で聞くことができる。
インターネットでも、各有名ポータルサイトが次々と占いサービスを始めており、本物の占い師が個人個人に運勢判断をすることをうたったサイトもすでに登場している。昨年4月から始まった「ライブ3Pコム占い館」は、占い師の養成だけでなく、デパートと共同で大規模な「占い博覧会」を開催している。
同占い館の責任者、呉詠裕さんによれば、最初の頃は多種類の占いを売り物に、紫微や四柱推命、姓名判断だけでなく、西洋の占星術も行なっていたが、結果的にはやはり中国伝統のものに人気が集まったという。インターネットならではの現象として、全体の3分の1が海外からのアクセスで、香港の占い師は特に台湾のユーザーに人気が高い。
「わが社の統計では顧客の主流はやはり女性で、3分の2を占めます。主に愛情運を占い、年齢も25〜30歳に集中しています。結婚へのプレッシャーを感じる年齢です」と呉さんは説明する。仕事に比べ、恋愛は予想がつかず、不安に陥りやすい。そこで同サイトでは、占い師との直接のコミュニケーションを通して、できるだけ前向きなアドバイスが得られるようにしている。
本物の占い師を登場させたのがライブ3Pコムの成功の原因だろう。だがこの方法では、さばける客の数は限られており、利潤は高くない。一方、コンピュータ占いは1回100元と安いが、それだけ気軽に多くの人がアクセスしてくるし、大量の人数をさばける。そのため各サイトは、より正確なコンピュータ占いソフトの開発に全力を挙げている。
先生は入門の手引きだけ
一般的な占いの料金は、普通の八卦占いが300〜800元、紫微が1000〜数1000元と幅があり、姓名判断になるとさらに高い。「大枚はたいて人に占ってもらうより、自分で学んだ方が特技にもなり、その気になれば開業も可能かもしれないと思うのです」と、ハイテク業界で働き、かつて占いを学んだことのある呉宗泰さんは、占いを学ぶ心理を説明する。ところが個人レッスンを受けて初めてわかるのだが、数1000元の月謝で学べるのはほんの基本だけ。さらに細かな内容や、先生独自の経験などまで教えてもらおうと思えば正式に入門しなければならず、それには数10万は出費を覚悟しなければならない。
台北の士林コミュニティ・カレッジで「生活における運勢学と風水」コースを教える藍明和さんは、各種占いをこう説明する。「子平派」は八字による占いが得意で、占い方も複雑でなく、人生の吉凶や金運がよく当たる。「紫微派」は、占星術によるもので、金運はあまり当たらないが、愛情運や災難の予言に適している。「江湖派」は、人の外見や顔色などを読むことでアドバイスを与える。
藍さんはすばり、「専門領域の異なる先生たちから学び、各長所を統合し、短所を補いながら占うことがこの仕事には必要です。ただ、各先生に払う月謝をすべて足せば100万元を超えるでしょうね」と言う。占いに興味があるというだけで、初めから数10万元も払うのでは割に合わない。そこで入門に最適なのが、地域のコミュニティ・カレッジが開設する占いコースだ。風水、紫微、姓名判断、八卦占いなどのコースがある。
「先生は入門の手伝いはできますが、修養は個人にかかっています」大切なのは興味と努力で、授業料の安いコミュニティ・カレッジでも、1〜2年で一人立ちする人も少なくないと、藍さんは言う。
士林コミュニティ・カレッジの今学期の占い初級コースには、40〜50歳の人が多く、職業もさまざまで、いずれはその道で食べていきたいという人たちだ。中でも目を引くのは母子で参加している鄭さんだ。
成功への道は努力
輔仁大学経済学科4年の鄭同祐くんは、お母さんと一緒に授業を受け、お母さんが授業でわからなかったところを教えてあげている。先生の講義は興味深く、教わった通りに自宅の家具などの配置をお母さんと二人で変えていると、親子の仲もよくなってきたと、鄭くんは言う。
「ただ、家具の位置を変えても効果があった様子はなく、中間テストはあまりよくなかったです」と言って鄭くんはしばらく考えた後、「やはり自分の修養が足りないからでしょう」と付け足した。授業に10週間通って感じるのは、占いや風水は個人的なことには適中度が高い。しかし経済学を学ぶ彼は、占いで株式市場を予測するなどということは信じられないと言う。
鄭同祐くんの客観的な見方に比べ、お母さんは、占いはストレス解消や心理治療に多少の効果を発揮すると考えている。何かに失敗した時に、原因が個人の努力不足によるものか、運勢によるものかを検討してみることができる。「これもまた、積極的な生き方でしょう」と、お母さんは言う。鄭同祐くんには占いの才があるので、もし彼がこの道に進みたいと言えば、反対はしないそうだ。
昔は誰にでも手の届くものではなかった占い業が、今では人気職業となっている。実際にどれほどの適中率があるかはともかく、藍明和さんは、この道を目指す人に次の点を忘れないでほしいと言う。「どんな職業でも成功するために一番大切なものは努力です」と。確かに、たとえ未来を読める占い師でも、努力を忘れれば成功はあり得ないのだから。