台湾はオーストロネシア語族の「母」と呼ばれている。東南アジアの島嶼に暮らす先住民族は同じルーツを持つからである。また華人移民や列強植民地としての経験、熱帯気候や海との近しさなど、台湾と東南アジアに共通する文化的要素は少なくない。こうした養分に培われ、各地で優れた文学作品が生み出されてきた。
今月の『光華』は、文化部主催の「赤道二三五・東南アジア文学フォーラム」に招かれたベトナムの作家バオ・ニン氏、インドネシアの作家アユ・ウタミ氏、そして台湾の作家・房慧真氏を対談にお招きし、国境を越えた「生」への熱い思いを語っていただいた。
今年のバンコク国際ブックフェアにおいて、台湾は2007年に続いて2度目のテーマ国に選ばれた。『光華』の取材班も会場を訪れて現場での文化交流の様子をレポートする。また、台湾の出版業界の理念や見方も今月号の重点である。政府から民間まで、新南向政策の波に乗って南へと展開し、これまでとは違う境地を開こうとしている。
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今月号の「台湾をめぐる」シリーズでは、新竹の県道122号線、竹東から自転車で出発する。県道に沿って蕭如松旧宅、軟橋彩絵村、張学良旧宅、大鹿林道などのスポットを巡り、皆様とともに自転車の旅の美しさを味わってみたい。「フォトエッセイ」では馬祖諸島の北竿を訪ねる。そこで催される独特の「擺暝文化祭」と島の特殊な建築物をご覧いただく。
同じく台湾の美と言えば、第20回国家文芸賞と第3回総統イノベーション賞を受賞した建築家の黄声遠を忘れてはならない。黄は人間性の角度から建築物を設計し、宜蘭県の各地に土地への熱い思いを表現している。
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芸術の影響力に国境はない。物故した台湾漫画界の巨匠、鄭問の作品は、台湾だけでなく、日本、香港、中国大陸でも愛されてきた。その作風は漢字文化圏で異彩を放ち、この世代のクリエイターたちを啓発した。鄭問が生涯貫いた創作への強い思いと創意を振り返り、その弟子の観察を通して、巨匠の巨匠たるゆえんを探る。
芸術の分野では、世界に知られる作曲家・指揮者の金希文にも光を当てる。その作品からは台湾30年来の音楽創作発展の軌跡が見て取れる。
このほかに、外交部と文化部が手を組み、ニューヨーク、ワシントン、シンガポールなどの在外公館や大使公邸で開催している一連の「台湾現代アート展」をレポートする。美術展は、台湾の優れたソフトパワーを世界に披露するとともに、パブリック・ディプロマシーを豊かなものにしている。