仕事が生活そのもの
出資者や人員探し、プロモーション等の激務が終わり、年末にやっと数日、彼女の最も大切な仕事をする時間ができる。台北復興南路にある、アパートをオフィスに改造した部屋で、彼女は脚本を読み、監督と打ち合わせ、自社「威像」のスタッフと撮影進度について話し合う。
夕方、珍しく早く仕事がひけたので西門町へ映画を見に行き「これぞ純粋な娯楽だね」と高らかに笑った。映画館を出てタクシーをつかまえ、師大路に向かう。ジャズ・バーBlue Noteのドアを開けると、友人であり『囧;男孩』の監督である楊雅喆;がすでに来ていた。黒ビールが運ばれてくるとおしゃべりが始まる。もちろん話題は映画だ。
ほかの業種と同様に、台湾で映画を撮るには交友関係が最も大切だ。一緒に仕事をし、遊びにも出かける。映画が仕事と私生活を結びつけているのだ。「照明がいないのなら一人紹介してあげるよ。ところで今、仕事がないのだけど、そっちの助監督やらせてよ。いつも何か撮っているって感じじゃないとね」といった具合だ。
『九月に降る風』の林書宇監督はこう語る。魏聖徳監督が『海角七号』の脚本を書き上げた時、林は最も早くにそれを読んだ友人の一人だった。「脚本を読んで意見を言い、人材や資金集めとすべて助け合います。小遣い稼ぎのためにCFやテレビドラマ撮影の仕事を回すこともあります」
昨年『海角』に次いで興収の高かった『囧;男孩』の楊雅喆;監督も製作を李烈に依頼する前、一度は葉如芬に頼もうと考えた。「でも当時、如芬さんは山ほどの仕事を抱えていました」と楊は説明する。2007年と翌年は『レッドクリフ』『九月に降る風』、日中合作の『闘茶』と3作の製作に葉は追われていた。『囧;男孩』の成功に、「なぜ『九月に降る風』の方を引き受けたのか」と問う者もいる。
「私はそういう考えで仕事はしません。書宇にはすでに引き受けると言ってあったし、手が一杯でした。いずれにせよ烈さんは大したものです。雅喆;を全面的にサポートし、優れた俳優を選びました」と葉は賞賛する。不振だった台湾映画の成功は誰が成したにせよ嬉しい。
スウェーデンと共同制作の長編「霓虹心(miss kicki)」は葉如芬の野心作。写真は撮ったばかりの映像を劉漢威監督(左)とチェックする様子。