弱者を排斥か
台北市が公営住宅政策を先行させて実施し、賃貸専用で質の高い管理された住宅モデルを開き、しかも多様な建設方式を展開したことで、今後は小面積でも住みやすい公営住宅が一層広まっていくことが予測される。
その一方、入居資格の条件制限を緩和したことで社会的弱者向けの住宅枠が少なくなりすぎ(あるいはゼロ、たとえば大龍峒および近日抽選の万隆駅公営住宅)、社会的弱者排斥ではないかとの議論が起こっている。
まず、台北市政府が掲げた申請資格の条件は、住宅を持たず、世帯の年収が中央値の50パーセンタイル以下(2012年を例にとると、基準値は世帯年収が148万元以下、単身世帯では88万元以下)である。言い換えると、給与レベルが中の上の若者世帯であれば、申請資格があるということになる。
高文婷によると、これは異なる社会層を混在させて、公営住宅=貧困者住宅というレッテルを避けるためだが、それでも弱者である低所得世帯も申請できると言う。
この問題に対して、社会住宅連盟の副発起人で都市改革組織の事務長・彭揚凱は「住宅法が社会住宅の少なくとも10%を弱者枠に当て、これを最低限の保証と規定しているのに、地方政府はこれを上限枠と見なして、社会的弱者への提供に消極的なのです」と批判する。
彭揚凱事務長によると、社会住宅政策が成熟している国々では、申請者の収入条件をまず世帯年収の10~20パーセンタイル以下と厳しく設定していて、公営住宅の総量が増加してから、収入条件を緩和する方法を採っている。
社会的弱者への賃貸に協力してきた経験豊富な崔媽媽基金会の呂秉怡事務長によると、社会住宅の趣旨は一般の賃貸市場では排斥されて家を借りられない心身障害者、単身高齢者など、社会及び経済上の絶対的弱者への保障だったはずだと指摘する。しかも、こういった層には住宅にバリアフリー設備が必要となる。若者やシングル・マザーなどの世帯に対しては賃貸料補助などの方法で、適切な賃貸住宅への入居に協力することも考えられる。
呂事務長はこれに対して、台北市にはすでに賃貸専用の公共住宅として国民住宅が23ヶ所、低価格住宅が4ヶ所あり、また中継住宅(被災者や撤去のための移転世帯向け)も2ヶ所あって、計5771戸に上り、台北の住宅総数の0.64%を占めているという。市政府としては、今後もこういった住宅の位置づけを見直し、整備を進めて、社会住宅のモデルを確立していくつもりである。
核家族や単身世帯の増加に伴い、公営住宅も多様化している。写真は台北市の大龍峒公営住宅3LDKタイプのモデルルーム。