将来を見据えた技術開発
工作機械は構造上、マシンそのもののほかに、重要なコンポーネンツとしてコントローラが欠かせない。機械の頭脳と呼ばれるコントローラはマシンに指定したプロセスで精確に作業をさせるものだ。かつて、世界のコントローラは主に日本とドイツがリードしていた。
コントローラの技術を持ってこそ、工作機械の付加価値が高まる。そこで工業技術研究院では10年の時間と多くのリソースを投じてハイエンドの国産コンピュータ数値制御器(CNC)を開発した。これを技術移転することにより、工作機械メーカーのカスタマイズ生産とインダストリー4.0推進に協力している。「現在台湾のCNC年間生産量は約8~10万セット、年間売上は30~50億台湾ドルに達します」と麦朝創は言う。
ここ数年、台湾の工作機械産業は自動化やビッグデータ、IoTといった世界的なスマート製造の流れの中にあるが、そうした状況の中で、さらに温室効果ガス排出削減、ネットゼロなどの課題とも向き合わなければならない。台湾工作機械及び部品工業同業組合の許文憲·理事長は、インダストリー4.0が求めるスマート製造やネットゼロは、一歩ずつ進めていくほかないと語る。「インダストリー4.0を達成するには、まず自動化、次にビッグデータ収集をしなければならず、これらを経てようやくカーボン·ニュートラルを目指すことができます」
許文憲は次のように提案する。一台の工作機械は多数の部品からなるため、産官学が協力して部品をリスト化し、それぞれの部分の二酸化炭素排出量を分析して同業組合がその情報を産業界に提供して改善していくというものだ。そうした中、工業技術研究院では2022年から17の大学と「産学研カーボン·ニュートラル連盟」に署名を交わし、工作機械産業の二酸化炭素排出量算出に協力している。そこからスマートプロセスを推進してビッグデータ分析を行なうことで省エネ製品の生産を促していく。
工業技術研究院が開発したハイエンド工作機械主軸駆動機低炭素化技術は、従来の駆動機に比べて7割のエネルギー使用を削減でき、EUのエネルギー効率規制をクリアしている。IE2の効率レベルに達し、来年EUで炭素税が試行されると、これが重要なソリューションとなる。
工業技術研究院が開発したハイエンド工作機械主軸駆動機の低炭素化技術は、世界の市場とつながる省エネ低炭素のソリューションである。(工業技術研究院提供)