異なる社会で共通する激しい変化
それぞれの国の社会的変化が、執筆計画に影響をおよぼすことはありますか。
ここ数年のベトナム変化は、ますます早く、大きくなっています。経済の発展によって、価値観の変化や都市の混乱、秩序の崩壊といった問題が生じています。一人の作家として悲しいことだと感じています。
台湾社会も大きく変化しています。社会に出て最初に「壱週刊」の記者になりましたが、4年の間にメディアの環境も大きく変わりました。メディアが資本家に縛られ、報道に広告が入り込み、色情的でグロテスクな内容や、ネットでのクリック率が要求されます。さらに最近は中国の資本家が台湾のメディアに介入してきています。私の著書『像我這様的記者(私のような記者)』にはこうした変化を書いています。
インドネシアの報道は自由になりましたが、今は自由が行き過ぎてフェイクニュースが氾濫しています。特に特定の民族や宗教関係者は、自分が見たい報道だけを選び、正確で客観的な事実を見ようとしません。こうした「独断」がインドネシア社会本来の寛容さを変えつつあります。
ですから、報道の自由の他に「思考の自由(freedom to think)」が必要だと考えています。そこで私は、インドネシアにより包容力のある寛容な社会になってほしいと思い、次の一冊は「critical spiritualism」をテーマに書こうと思っています。
台湾のことをもっと知りたくなりました。房慧真さんから、台湾の文学や歴史への理解を深めるための本を推薦していただけませんか。
私からは5冊の本をお勧めしたいと思います。齊邦媛の『巨流河』、台湾文学の父とされる頼和の『一桿稱仔』と『呂؛.若小説集』、白先勇の『台北人』、そして黄春明の『蘋果的滋味』です。
ベトナムの作家としては、グエン・フイ・ティエップとグエン・ビン・フーンをお勧めします。代表的な詩人はグエン・ズーです。ベトナム文化を深く理解するにはその叙事詩『金雲翹(キエウ伝)』をお勧めします。
私が推薦したいのは、女性解放運動を推進した貴族の娘ラーデン・アジェング・カルティニの『カルティニの風景』、プラムディヤ・アナンタ・トゥールの『人間の大地』、スタン・タクディル・アリシャバナの『インドネシアの文化と社会改革』、アフマッド・トハリの『パルック村の踊り子』、ハイリル・アンワールの詩『おれ』です。
『台湾光華雑誌』は、 2018東南アジア文学フォーラムに参加した作家を対談にお招きした。ベトナムの作家バオ・ニン氏、インドネシアの作家アユ・ウタミ氏、そして台湾の作家である房慧真氏である。
(左から)インドネシアの作家アユ・ウタミ氏、台湾の房慧真氏、ベトナムの作家バオ・ニン氏。(会場提供:思劇場、荘坤儒撮影)