どんな土地に暮らすかによって住民の気質も違ってくるとすれば、澎湖の島民の気質は「堅忍不抜」という言葉で形容できるだろう。
数千万年前、海底で火山が爆発してマグマが吹き出し、隆起して生まれたのが澎湖諸島である。冷たい海水によって冷やされた溶岩は、柱状玄武岩となり、天に向かって垂直にそびえる。それが季節風と海水の浸食を受け、黒い結晶がさまざまに形を変えていった。ごつごつした海蝕洞、岩瀑と呼ばれる高々とそびえる柱状玄武岩などが、長い時の流れを感じさせる。
このように厳しい環境で、澎湖の先人たちは活きる術を見出してきた。女性たちは周囲の資源を活用し、引き潮の時に岩の海藻を採る。廃屋の壁面にはむき出しになったサンゴ石が見える。日に焼けた人々の目には何ものも怖れない強さがある。
澎湖は、大自然と人とが調和し共存してきた楽園であり、一面に咲くテンニンギクが静かに島々を照らしている。
内垵浜の一角。玄武岩の足もとにテンニンギクが咲き誇る。
南寮地域の女性たちは、引き潮になると岩の海藻を採る。
南寮地域の古い民家。崩れ落ちた壁から、サンゴ石を積んで建てられたことがわかる。
七美島のハート型の石滬(伝統的な漁の仕掛け)。ここからも大自然と共存する澎湖の人々の知恵がうかがえる。