スーパーマイクロは2012年にアジア市場のポテンシャルに注目し、台湾に工場を設立した。2019年にさらに資金を投じて拡大した生産基地が2021年に竣工し、稼働を開始した。台湾IT産業の優位性を活かして成長し、世界に誇る高効率かつ環境に配慮した生産で、アジア太平洋経済圏における台湾の実力を確かなものとしてきた。

桃園市八徳区のサイエンスパークにあるスーパーマイクロの面積は2万2500坪。今後さらに生産能力を拡張していく。

幸運の背後の努力

「いつも自分は幸運だと思ってきました」と語るスーパーマイクロの梁見後CEOだが、そのはにかんだ笑顔の背後で人並みならぬ努力をしてきた。「1993年に会社を立ち上げた時は周囲から反対されましたが、私は信念を貫いて夢を実現してきました」と言う。彼は台湾の母校での教職を辞し、シリコンバレーに渡って視野を広げた。「当時は価格競争が主流となっていましたが、私は品質こそ王道だと考えていました」30歳だった梁は、妻と友人の廖益賢の3人で会社を興した。原価の高いシリコンバレーで「幸運なことに半年後には利益を出し始めました」と言う。

「会社の技術力には常に自信を持っていました」情報分野出身の梁は、苦労がいずれは糧になると信じて日夜研究開発に取り組み、品質を高めていった。「最も目の肥えた顧客を満足させられれば、その製品は売れると考えていました」と言い、シリコンバレーの厳しい要求に耐えられる製品を作ろうと考えた。「1995年に世界初のデュアルCPUのサーバー用マザーボードを、後にクアッドCPUのマザーボードを打ち出した時には、アメリカの大企業も信じられなかったのです」と言う。南台湾出身の真っ直ぐな気性の梁は、その気力で外国人を承服させた。

立ち上げたばかりの会社は、生産能力や価格の面で大企業にはかなわない。そこで多品種少量生産のカスタマイズサービスを提供することでブランドとサービスの評価を高めていった。そのハイエンドのサーバーが注目され、2012年にはサーバーおよびオンラインストレージ設備の出荷量で世界3位のシェアを占めるまでになった。

梁見後は、常にスピードを追求し、それが機先を制するカギとなったという。効率の高い実行力で他社より先に製品を出していったのである。規模では大手にかなわないため、機動的なサービスを提供した。納期を短縮するためにモジュール化も進めた。これは創業当初から行なってきたことだ。各種部品の特性と顧客のニーズに照らしてさまざまなモジュールを構築した。これによってスピーディに顧客のニーズに応えられ、レゴのように分解して組みなおすこともでき、ハード面での顧客の支出を減らすことができる。部品によって寿命が異なるので、すべてを一度に交換する必要もない。これにより電子廃棄物も大幅に削減でき、環境負荷を低減できる。環境保全がますます重視される中、スーパーマイクロは一貫してサステナビリティにこだわってきた。そして現在、この理念は世界中のサーバーメーカーにとって、不可逆的な潮流となっている。

スーパーマイクロは多品種少量生産のカスタマイズサービスを行なうことでブランドを確立し、評価を高めてきた。2012年にはすでにサーバーおよびオンラインストレージ設備市場で世界3位のシェアに達した。

トップを走り続ける

We Keep IT Greenがサステナビリティを追求するスーパーマイクロのスローガンで、企業の社会的責任を果たし、人類と地球に少しでも貢献したいと考えている。

「グリーンコンピューティングへの道は、偶然のきっかけで開かれました」と梁見後は言う。2004年に映画『デイ･アフター･トゥモロー』の予告編を見た時、親である梁見後は子供たちから「お父さんはすごい」と言われたいと思った。そして帰宅の途上、やるべきことがひらめいたのである。「大まかに見積もってみると、パワーサプライの効率を高められれば、一年間に少なくとも火力発電所30基分の電力消費を減らすことができることがわかりました」この驚くべき数字に、梁見後は使命感を抱くこととなる。

コンピュータは多くの問題を解決してくれるが、熱を出すという、地球環境に関わる問題がある。だが、当時市場に出回っていたパワーサプライは、彼の求めるレベルに達していなかった。

「市場にないのなら、自分で作ろう」ということで、彼らはパワーサプライの効率を70％から90％まで改善し、基礎設備も全面的に改良した。電子回路を省エネ設計にして冷却システムも変えた。コンピュータが発散する熱を減らすために、自然風による放熱と各種組み合わせによって温度を下げることにも成功した。これによってエアコンの使用も削減でき、地球温暖化へのコンピュータの影響を大幅に減らしたのである。

近年はクラウドコンピューティングの発展で、サーバーのレベル向上が求められている。そこでスーパーマイクロはグリーンコンピューティングに重点を置いて省エネ部品を開発し、データセンターとクラウドソリューションの構築によってエネルギー消費量を50％削減した。ハードウェアの買換えにおいても60％の購入費用を削減できると見込んでいる。

スーパーマイクロは環境のためにグリーンコンピューティングの先頭に立って同業者を導いている。電子廃棄物を減らし、コンピュータの熱の問題を解決すれば、地球環境に貢献できる。

グリーンコンピューティングを事業のコアとするスーパーマイクロは、消費電力を5割削減できる一連の省エネ部品も生産している。

故郷の良さ

「海外に出ると、しばしば故郷の夢を見るようになります」と、28歳で台湾を後にした梁見後は言う。そうして2012年、スーパーマイクロは台湾桃園市八徳のサイエンスパークに100億元を投じ、売上600億元を見込んだ。当時、経済部長（経済相）だった沈栄津が、同社による故郷･台湾への投資を促した。

アジア太平洋市場における台湾の発展と展開を高く評価した結果の投資だった。台湾には川上から川下までの統合力があり、顧客に近いという優位性もある。この3年、同社のサーバーのアジア地域における売上は欧州を抜いて2割に達し、アメリカに次いで2番目となっている。

台湾工場の第二期も完成し、研究開発の拠点が置かれ、競争力は大幅に向上、OEMと自社ブランドの多様な発展を目指している。「当社の全方位型ITソリューションと企業のために作業コストを削減する自動化設備は、将来的な重点となります」と言う。

収益も年々成長しており、2007年にはアメリカで上場、2020年には全世界での収益が33.39億米ドルと7倍まで成長し、市場価値は14年で8倍になった。世界で最も成長の速いITインフラ企業ランキングの中でもトップを走っている。

「台湾の人材は非常に優秀です」と梁見後は語る。台湾にはよい自然環境と文化的環境があり、サプライチェーンは完備し、さらに政府による産業支援もあり、「グリーン産業の未来は無限に広がっています」と言う。環境に配慮した製品が増えれば増えるほど地球環境の助けになるのだ。

創業28年になるスーパーマイクロは、さらなる高みに向けて準備を進めている。「私は幸運です。同じ理念を持つ仲間が、この道をともに歩いてくれるのですから」梁見後は地球にやさしい事業を堅持し、その事業を拡大し、さらに大きく羽ばたこうとしている。

品質管理を重視するスーパーマイクロでは、あらかじめ設定したラックマウント･ソリューションを用い、顧客がスイッチを入れるだけで使用できるようにしている。

スーパーマイクロCEO——梁見後