隠れた神木集落
全台湾の400株を超える巨木を系統だって調査してきた神木専門家の黄昭国によると、台湾最大の神木は幹囲が20.5メートル、大雪山230林道35キロ地点にある大安渓神木(または大雪山神木、巨無覇神木とも呼ばれる)で、実に迫力がある。
1999年9月21日の台湾大地震の後、230林道は大規模に崩落し、続いて幾度も水害に遭った。黄昭国は大安渓神木を懐かしく思い出した。2010年には道路状況が確認できなかったため、彼は全国の3000メートル以上の百岳を16回も登った高山ガイドの周業鎮と、登山に詳しい黄永利に依頼して一緒にこの木を見に行った。
果たして、大安渓神木まで2キロの地点に二つの断崖があり、草も生えない斜面を滑り落ちれば戻ることもできず、百岳の80以上を制覇した黄昭国も足の力が抜けてしまった。ちょっと気を抜くと100メートルの峡谷に転落してしまい、ヘリの救助を求めなければならなくなる。
その時、彼は手を合わせて大安渓神木に「どうかお姿を拝みにいかせてください」と祈った。すると足に力が入り、さらに2時間を歩いて緑の巨木を拝むことができたのである。林務局の倉庫に泊まった時、今度は帰路が心配になり、3人そろって神木に祈った。すると順調に山を下りることができたのである。「これでも神木に魂がないと言えるでしょうか」と黄昭国は言う。
20年余り前から神木の調査を開始した彼は、休日は常に山で過ごしている。本職は「自由時報」紙の記者で、彼が担当しているエリアは賀威神木群がある三峡エリアだ。ここには林務局が公表する神木園区の他に多くの隠れた神木があることを彼は発見し、それ以来、神木愛好家となったのである。彼は樹木の幹囲によって、6~9メートルを巨木、10~12メートルを神木、12メートル以上を超級神木に分類している。
タイワンベニヒノキやヒノキはいずれも雲霧林を好み、台湾の拉拉山や棲蘭山、阿里山神木園区などはいずれも標高の高い雲霧帯にある。一年を通して湿度が高くて陽光も十分に注ぐ。晴れの日でも午後になると雲霧に覆われ、あるいは霧雨が降る。夜になると雲霧は晴れ、星空が見え、まさに仙境、巨木の生長にふさわしい。
黄昭国にとって最も美しいのは司馬庫斯の神木で、神木群の中の「親分」と形容する。標高1650メートルの雲霧林にあり、巨大な神木の周囲には大小さまざまなベニヒノキが生息し、巨木はまるで号令を発する王者のように見える。
「一人の人間に何かできるのは長くても百年ですが、神木はいくつもの天災を乗り越えて生きてきました」黄昭国は、これらの神木には頭を下げたくなると言う。拉拉山にある幹囲最大の18メートルの巨木は、4本のベニヒノキと合体した木で、一部の枝は枯れて白くなっているが、緑の葉を延ばしている幹もあり、生老病死と懸命に闘う姿に頭が下がるのだという。
2023年、徐嘉君のチームは、台湾で現在までに知られる最も高い84.1メートルの巨木を発見し、「倚天剣」と名付けた。(李香秀提供)