恒春半島の夕刻
恒春半島で長期にわたってアカモズ、サギや猛禽、ガンなどの旅鳥を観察してきた蔡乙栄は、台湾を渡りで通り過ぎるツバメが、毎年5月から8月の夜間、恒春半島で夜を過ごすことを、10年余り前に偶然発見した。「旅鳥にとって陸路は安全ですが、天候が安定せず、留まるところもない海路は危険です。体力を消耗しないように、海に出る前に休むのです」と言う。
旅鳥は水や草が豊富で、天敵が少なく、人目につかないところに数日留まるが、ツバメは人通りの多い屏東の車城や恒春市に一晩だけ留まる。しかも、ツバメは飛びながら捕食できるという利点がある。
恒春市街に一泊するツバメの数は数千羽、多い時は3万羽に上った。これは台風に足止めされたためである。夜になるとツバメは空中を旋回してから電線に10センチ間隔ほどで足を休める。
恒春半島には、リュウキュウツバメも群れをなして羽を休めるが、彼らは場所を選ぶ。ファイブスターの福華ホテルの地下駐車場で、天井の配管にびっしり止まって安全な一夜を過ごす。大変なのは、糞を落とされる車の持ち主である。ホテルは追い払っても入ってくるため、季節になると配管の下に網を張って糞を防いでいる。
最近では街角の電線も地下化し、糞便の問題があって住民に追われることもあるというのに、ツバメの宿泊数は安定的に増加傾向にあるという。「ツバメは野生の鳥類の中でも特異な種で、人為的な破壊があっても減少せず、逆に繁殖しています。スズメやハトに比べられるでしょう」と蔡乙栄は言う。
余りにも普通で、どこにでもいるために、台湾のツバメの群れの総数、種類、渡りの経路など、どれも具体的には答えられず、また優先的に研究されても来なかった。しかし、ツバメから自然研究の窓が開かれるし、庶民の家に春の温もりと祝いを届けてくれるかのようである。
「お腹がすいた!」一番左の幼いツバメは人間にもある白皮症だ。
動きが敏捷で旋回も得意なツバメは、空中で口を開けてそのまま餌を食べる。