植物肉のイノベーション
鳥インフルエンザや寒冷気候による昨年(2023年)の世界的な卵不足はまだ記憶に新しい。台湾、イギリス、アメリカ、日本でも卵の価格が最高値をつけた。そんな中、植物卵が代替品の一つとなり、痞食維根店はクラウドファンディングサイト「嘖嘖zeczec」を通じて2カ月で12万個の植物卵を販売した。
工研院中分院が開発した植物卵は、卵白部には特許取得済みの真菌や大型藻類のタンパク、大豆タンパクなどの原料を用いて弾力のある食感を出した。卵黄部には、大型藻類の繊維、緑豆、ニンジン、カボチャなどを用い、栄養価と食感の両方を実現した。
植物卵のほかにも、工研院中分院はロブスターやフォアグラの植物由来食品も開発しており、原料にはいずれも大型藻類が使われている。
気候変動、人口増加、食糧難などの解決、そして健康や環境の持続可能性のためにも、世界中が「未来のタンパク質(代替タンパク質)」を探し求めている。
工研院中分院の副執行長・李士畦は開発の動機をこう説明する。植物由来の食品は年20%近い勢いで成長を続けており、その商品化で最も重要なのは本物らしさ(主に食感)と栄養だ。現今の植物肉は多くが大豆タンパクやエンドウタンパクを用いるが、単一素材で多様な食材の食感を作り出すのは難しく、調味料や香料でそれを補うしかない。厚切り肉を作る場合は、加工時に接着剤や甘味料を使う必要があり、何枚か食べればしつこく感じる。
一歩進んだタンパク質源を生み出す、それが工研院中分院の目指す方向となった。「魚介類から始めることにしました」と李士畦は言う。魚介類は模倣が難しく、開発に成功すれば競争相手のないブルーオーシャンで先発者となれるからだ。
開発チームは2021年にまずアメリカンロブスターに取り組んだ。ロブスターの身はプリプリした食感で、茹でて引き裂くと縦方向の繊維に斜めの繊維が交錯するように詰まっていて、これを真似るのは非常に難しい。植物由来の食品に占める魚介類の割合がたった1%なのも頷けた。
植物由来ベーコンのスモーキーな風味は、一般消費者の舌を満足させる。(工研院中分院提供)