時を経て変わらぬ慈悲の守護
尽きることのない心と力を注ぎ、博物館を一から創り上げる過程に立ち合った見諶法師。敬う心、喜びの心で、無情の金石を有情世界に導いた。「木彫には特殊な保存·展示環境が必要です。そこで、準備の段階で、木彫のための専門展示館を計画したのです」厳しく温度と湿度をコントロールし、防火防虫対策を講じた。中台世界博物館は文物の守護者たることを使命とし、千年の宝を永劫に伝えていく。
芸術家や仏教文物研究者にとって、中台世界博物館と木彫分館は宝物庫である。美を賞でるだけでなく、分析し探求する。「仏像の造形と工法から、地域と年代がわかります」ロンドン大学文化財保存修復研究科修士で木彫分館館長を務める見排法師は、400点の所蔵を知り尽くしている。大は数メートルから小は指の節ほどの仏像の、繊細さ精巧さを目にすると、宗教美にため息が出る。見排法師は木彫の菩薩像を指し、髪髻や長い広袖は、遼の時代のスタイルだという。「契丹は草原民族ですから、風に翻る布に、馬を馳せる英姿が表現されています」
所蔵の仏像の中に、漆彩色が剥げて素地が見えるものがある。それは考古学研究の活きた教材になる。「この金の時代の木彫は、木材に紙を貼ってから彩色してあり、後期の布を下地として貼る技法と異なります」と、当時の木彫彩色工芸が多様であったこと、様々な素材を使っていたことがわかる。見排法師は、修復に当たって仏像の由来と違いを探求している。これも博物館の今後の教育の方向である。
仏像の顔つきをよく見てみると、西洋人の彫りの深い顔から、徐々に中国人の細い眉、一重瞼の清楚な目鼻立ちに近づいていく。見排法師は、「南北朝が仏像の漢化する分岐点です。宋の仏像は唐に比べずっと精細です」表情が収斂し、目鼻立ちが小作りで、材質に温かみがある。「早期の仏像は、原木一本から彫り出されたものがほとんどです」ほぞで接合する技法が成熟して以降、大型の仏像が作られるようになる
「四大菩薩の乗っているものも異なります」手に慧剣を持ち、青獅子に跨る文殊菩薩。白象に乗って布施·持戒·忍辱·精進·禅定·智慧の六波羅蜜の意味を表す普賢菩薩。観音菩薩が乗る朝天吼、地蔵菩薩の諦聴。丁寧に探索すれば、どこもかしこも奥が深い。
開催中の遼金仏教造像特別展。展示ホールは荘厳な空気に包まれている。