夢を定めたら実現させる
アイアンマンレースは人体の極限への挑戦であるとともに、「痛い」レースである。以前の李筱瑜は忍耐強く、泣くことはなかったが、アイアンマンで、泣くことを学んだ。涙は弱さではなく、そのためにレースを投げ出すこともない。
モンゴルのマウンテンバイクレース「モンゴリア・バイクチャレンジ」では、10日間のレース中、毎日ほとんど砂利道を走り、両手が振動でしびれて痛むうえに、臀部は摩擦で傷ができ、炎症が化膿して、サドルに座れなかった。しかたなく数時間ダンシング(立ち漕ぎ)を続け、痛みに吼え、泣きながら走った。これには外国人選手も驚き、その晩、痛みにやさしいサドルをプレゼントしてくれた。
李筱瑜は茶化していう。「きっと翌日は静かなレースがしたいと思ったんでしょう」どのくらい痛かったのか尋ねると、深く息を吸い込んで答えた。「痛いのなんのって、息ができないくらい。それでもあきらめたくなかったんです。あきらめるのはもっと痛いから」
バイクで両足にこむら返りを起こしたことがある。自転車ごと転んだあと、筋肉の痛みに耐えつつ再び自転車に飛び乗り前進した。水温零度近い湖から岸に上がり、手足が凍えて感覚がなくなったこともある。下痢でトイレを探しながら走り、腹痛に耐えながら弱々しく完走したこともある。喘息の発作が起きてぜいぜいいいながら走り、大会係員が止めても聴かなかった。決してあきらめないのは、完走が自分自身を意味し、台湾をも意味するからである。
人体が耐え得る最大の痛みは経験した。アイアンマンレースの孤独にも勝ってきた。李筱瑜は超越と征服の雄雄しさを胸にいだく。「極限に挑むスポーツにとりくんで、そこで見えてくるのは、体に限界はないということです」
夢を定めたら、実現させる。李筱瑜は世界ランキング10位に向けて邁進する。「上位10位でなければ表彰台に上がれません」自らに無限の期待と激励を寄せる。この夢のために、自信に満ちて短い足を全速で前進させている。
「ただひたすらトレーニングを重ねるのみ」自分が強くならなければ、厳しいコースや気候の変化を克服できない。(左/ディエゴ・サンタマリア撮影・右/陳恵君撮影)
「ただひたすらトレーニングを重ねるのみ」自分が強くならなければ、厳しいコースや気候の変化を克服できない。(左/ディエゴ・サンタマリア撮影・右/陳恵君撮影)
プロ・アスリートの道は孤独で険しいが、李筱瑜は世界ランキング10位以内という目標に 向って邁進する。(荘坤儒撮影)