メディアが広める恐怖
行政院衛生署は毎年、台湾の10大死因と10大ガンの統計を発表している。これ自体は、ガン予防の向上に役立つことなのだが、情報の簡略化とセンセーショナルな報道が、ガン恐怖をまねくこととなる。
新聞「デイリーアップル」が香港から台湾に順調に進出した後、他の新聞やインターネットメディアも生活や医療ニュースを重視し始めた。特にガン関連のニュースが人気があり、報道は「××はガンのリスク因子」といったものが中心だ。ガン患者の体験談を掲載し、ガン発生の因子が至る所にあるように思わせてしまう。
こうしたガン恐怖の伝播と拡散に対し、陽明大学のコミュニティ看護研究所の盧孳;艷;教授の意見はこうだ。医学界はガン因子を完全にわかっているわけではない。だがマスコミはリスク因子と発生の関連性の結論を急ぎ過ぎ、絶対的な因果関係があるかのように書く(女性が複数の異性と性交を重ねると「必然的に」子宮頸ガンになるなど)。こうしてガンの原因を単一のものに絞り、人々を神経質にし、行動や食生活にタブーを増やし、より自分を追い詰めてしまう。
衛生機関や企業によるガン予防PRなど善意のものも、不安の原因になりうる。
盧教授は「1日5種類の野菜と果物でガンを遠ざける」「野菜と果物5-7-9」(野菜と果物を子供は5種類、12歳以上の女性は7種類、男性は9種類毎日摂取しよう)といったコピーは簡単で覚えやすいが、そこには「野菜や果物を食べないとガンになる」と読まれる可能性があると指摘する。「毎日5種類食べたか気になり、1つでも不足すると不安になるのです」
「不足しないよう、食べるのではなくジュースにしています」子供が1人いる張さんは、多くの母親と同じくジューサーのCMを見て、2万元で買った。彼女のようにジュースでガンを予防しようとする人によって、毎年5億元ものジューサー市場が支えられている。