唯一無二の媽祖像の冠
郭春福によると、神の階級によって冠や帽の形も異なるという。媽祖は天妃から天后へと昇格したため、他の神々とは異なり、いい加減なものは作れない。だが神帽に決まったデザインはなく、工芸職人がそれぞれに腕を揮うことができる。60年にわたって神帽を作り続けてきた彼は、必ず自ら神像の頭の寸法を取る。頭の形や顔の寸法を考え、神帽をぴったりとフィットさせることで、端正で美しい姿となるのである。
そのため、郭春福と妻は二人でバイクに乗って高雄や屏東、宜蘭などを訪れ、時には飛行機代を自腹で出して澎湖まで飛び、自ら神像の採寸をする。神帽が完成すると、必ず自ら納品に行き、自分の手で神像の頭に載せて調整する。
数十年にわたって神帽制作に没頭してきた郭春福は、工芸家と言うより芸術家に近い。頭囲12センチほどの媽祖の神帽に、9匹の龍と4羽の鳳の装飾を施し、ほとんど人の目に触れない後部にも複雑な装飾を入れる。その作品を仔細に観察すると、向こうが透けて見える網状の龍の1匹1匹は、すべてシルバーワイヤーを1本ずつ細かく編み込み、それを溶接して一体化したものだ。それをさらに神帽に取り付けて形を整えるという実に手の込んだ細工である。
納めた作品は生涯保証するというのが郭春福の態度である。2000年には鹿耳門天后宮から、主神である媽祖像の頭囲146センチの神帽の注文を受けた。「これは恐らく世界最大の神帽でしょう」と言う。
鹿耳門天后宮は参拝者がひっきりなしに訪れる廟で、神帽も日々線香の煙に燻されて黒ずんでしまう。そこで昨年(2021年)、彼は依頼を受けて神帽の二度目の洗浄と修復を行なった。まず神帽に取り付けた装飾や部品を一つ一つ取り外し、バーナーで銀の色彩を復元する。それから過酸化水素水に浸して刷毛で汚れを落とし、メッキとコーティングを施してから、再び元の形に組み合わせていく。こうして整えられた神帽は、20余年の歳月を経ても精緻な芸術品と言え、正殿に鎮座する媽祖像に荘厳な風格をもたらす。
真剣なまなざしで神帽を見つめる郭春福に、まだ満足できないところはあるかと問うと、こう答えた。「神帽が一つ完成するたびに、もっと良くなるところはないかと考えながら見ます。こうすることで、次の作品はより良いものとなるのです」。常に高みを目指す彼は「倒れる日まで作り続けたものこそ、私の最高の作品となるでしょう」と語るのだった。
郭春福は金細工職人としての技を60年にわたって磨いてきた。金、銅、紙など異なる材質で神帽(神像の冠)を制作できる、台湾では数少ない工芸家だ。