あらゆることに教育の光が
子供の何気ない言葉が、東南アジア出身の親を持つ子供を傷つけたりした場合、教師はどう対処するのか、と記者は尋ねてみた。すると蔡先生は「あらゆることに教育の光がある」という言葉を引用し、良いことにも悪いことにも意義があり、教育の出発点になると語った。子供が何気なく発した言葉の背景を教師はよく見極め、その偏った見方に気づかせて正しい価値観や適切な言動を学ばせる、これが蔡先生の重んじる教育だ。
台湾に戻った星儒ちゃんの中国語はまだ充分でなく、先生はゆっくり話したり、身振りを加えたりして理解を助ける。同級生たちもそれを見て、同じように接するようになったという。「差別や偏見は生まれつきのものでなく誰かから教わったものだから、当然、教育で修正できます」
帰国後、蔡先生はTEDxYouth@Taipeiに招かれて講演した。舞台に立った先生は、今後も語り部となって差別や偏見をなくそうと決心した。
里帰りに付き添う間、子供と一対一で話すことで、その子の学校生活での思いや生活環境を理解でき、より多くのケアができる。
その国の言葉を一つ覚えることで交流が生まれるように、わずかな善意が人と人とを結びつける。子供たちの心にまかれた多文化の種子は、やがて発芽し、台湾社会を変える力となるだろう。
「今度はいつ来るんだい?」——星儒さんの祖父母が聞きたくても口に出せない言葉である。