唐奨第1回「バイオ医薬賞」受賞者
――ジェームス・P・アリソン氏と本庶佑氏
バイオ医薬賞は、テキサス州立大学のジェームス・P・アリソン博士と京都大学の本庶佑博士が授賞した。アリソン博士はCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原)を発見し、本庶佑博士はPD-1(ヒトのプログラムされたデスレセプター)を発見し、これを用いた腫瘍の新しい治療方法を開発した。両者の発見と研究はすでに臨床試験が行われ、腫瘍に対する治療効果が証明されて、抗がん剤に応用されている。
66歳のアリソン博士は、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの芽免疫科及び免疫治療研究の主任を務めており、専門は免疫学とがん症生物学である。
1995年にもう一人の科学者と共にCTLA-4を発見し、そのチームが最初にこれがT細胞抑制レセプターの活性を抑え、免疫システムを制御する重要な機能を有することを証明し、活性化したT細胞ががん細胞を殺す方法を開発した。これをがん治療に応用し、抗体薬品の開発にも成功し、末期の悪性黒色腫患者に治療効果があることが分かった。2011年に米FDA食品医薬品局の承認を受けて発売されている。
72歳の本庶佑博士は、京都大学大学院医学研究科免疫遺伝子医学講座の教授で、1992年に発見したPD-1はT細胞上のチェックポイントレセプターで、このレセプターの遮断剤を開発すれば、がんの治療効果を上げられる。
FDAはすでに数種の抗PD-1抗体をがん治療用の新薬として承認しており、小細胞肺がん、転移性の黒色腫と腎細胞がん患者に効果がある。PD-1とPD-1遮断剤とが、肺がん治療に新しい局面を開くと予言する専門家もいる。
アリソン博士は幼少時にがんで母を失ったことから疾病学研究を志したが、これまでの10年に成果を上げることができず、がんの免疫療法に効果が疑われていた。それが効果が証明されて、多くの患者が救われるということで、博士には大きな喜びとなった。
本庶佑博士は20年前にPD-1を発見したが、当時はこれががん治療に役立つとは考えていなかった。この10年その治療効果が発見され、今ではがんの免疫治療法が医薬品開発の主流となり、笑いながら「夢が実現した思いです」と語る。
DNAや龍をイメージした螺旋を取り入れた「唐奨」のメダルは、日本のデザイナー深澤直人氏の作品。