独自開発が進む
2017年、台湾は初めて独自に開発した人工衛星フォルモサット5号を打ち上げ、順調に軌道に入り、任務を遂行し始めた。そして2023年、台湾が開発した2基目の衛星が打ち上げられる予定なのである。
独自開発と言っても、人工衛星のすべてを自国で開発·製造するわけではなく、主要なキーコンポーネンツや技術を国内で開発することを指し、トリトンが搭載するGNSS-Rは台湾で開発したものだ。GNSS-Rの設計、製造と応用は10年ほど前に研究が始まったばかりの分野だが、台湾の歩みは驚くべきスピードを見せた。「私たちは2014年に開始し、2016年にはテスト飛行を行ない、すでに成功しています。2~3年で完成したのですから開発のスピードは非常に速いと言えます」と林辰宗は言う。「しかも、トリトンのGNSS-Rはファームウェアを最適化した後、1秒に8件のデータを受信することができるようになり、それは先に打ち上げられた衛星の2倍になります」と言う。気象データは資料が多ければ多いほど予測の精度は上がるため、台湾のトリトンは大きな優位性を持つこととなる。
このほかに、オンボード·コンピュータ(OBC)やパワー·コントロール·ユニット(PCU)、GPS受信機(GPSR)、光ファイバージャイロ(FOG)など、10項目のキーコンポーネンツや重要技術も台湾で開発されたもので、全体の82%に上る。さらに地上の設備においても、20を超える国内の研究開発機関や企業が参画している。
2基目の独自開発の衛星の意義を林辰宗にたずねると、こう答えてくれた。未知の物事に関して、最初の成功は方向性が正しいことを示しているが、細部についてはまだ明確になっていない。2回目の成功は、細部の9割5分は掌握できていることを示す。そして3回目の成功ですべてを理解したことになるのである。台湾の人工衛星国内開発において、フォルモサット5号は人々を奮い立たせる成功をおさめ、今回のトリトンも順調に進めば、人工衛星に対する私たちの理解が深まったことを示す。「台湾が人工衛星独自開発の力を持つことを立証できるのです」と言う。
巨大な人工衛星プロジェクトは、決して一国の力で完成できるものではなく、国際協力の成果でもある。人工衛星が取得するデータも自国だけで利用するのではなく、世界中の気象や防災、学術研究などに用いられるものだ。
Tritonは「風の場」を観測する人工衛星である。海面が反射するGNSS信号を収集して海面の状況を推計し、そこから風速や海面の風、台風の強度や進路などの情報を掌握する。(国家宇宙センター提供)