2050年、サッカーのロボットチームは人間のチームに勝てるだろうか。将来はサッカーロボットや組立てロボットキット、ペットロボットが、娯楽ロボットの主流になると見られている。
6月、サンフランシスコで台湾の淡江大学が設計した車輪型ロボットが韓国チームと戦い、10分間に12のシュートを決め、12対0で圧勝した。
これは1995年に韓国科学技術学院のキム・ジョンファン教授が発起した世界ロボットサッカー連盟(FIRA)の大会で、毎年30余ヶ国が参加する。大会は、中型ロボット、人型ロボットなど8部門に分かれて行なう。
淡江大学が優勝した中型ロボット部門のルールは簡単だ。四方を柵に囲まれた6×8メートルの競技場に、3台のロボット(1台はゴールキーパー、2台はフォワード)を置き、ロボットは自律的に行動して相手のゴールに球を入れるというものだ。

左上から、会話ができる赤ちゃんロボット、メールが来たら目が光るウサギ、アザラシ型ペット、くすぐりエルモ。
視覚の重要性
台湾と韓国の車輪型ロボットの外観に大きな差はないが、点数の差はどこに出たのだろう。
「会場には自然光が差し込むので色温度が変わります。その状況で球が反射する光線がプログラムに設定されていなかったので、相手のロボットは球が見えなかったのです」と淡江大学車輪ロボットチームの隊長で電気工学大学院博士課程に学ぶ劉智誠さんは言う。この前の試合で中国の青島大学と戦った時は水銀灯の光と波長がロボットの視覚に影響し、ぎりぎりの勝利だったので、すぐにロボットの視覚システムを調整したのだと言う。
淡江大学が設計した四輪ロボットは高さ35センチ、重さ17キロ。4つの車輪は4つのモーターで動き、前後左右に機敏に動くことができる。前方にはコイル状の電磁石があり、磁石の正負極の力で球を蹴る。中にはノートPCが1台はめ込まれ、頭の上には360度をとらえる映像装置がある。この高価な凸面カメラを使って球を見つけ、ゴールの位置をとらえ、進む方向を決めるのである。
ロボットサッカー競技では、国際的に定められた特定の色を用いる。球はオレンジ、ゴールは黄色、床は緑、ロボットは黒である。そのためロボットは視覚的に色を識別し、映像によって物体の正しい位置を計算できなければならない。ロボットが会場の光線の変化に適応して球の動きをとらえ、精確な方向と力で球を蹴られるかどうかが、勝敗を決めることとなる。
淡江大学の車輪型ロボットは、2年連続FIRAの中型ロボット部門で優勝しており、今年は難度の高い「人型ロボット」部門でも優勝した。

左上から、会話ができる赤ちゃんロボット、メールが来たら目が光るウサギ、アザラシ型ペット、くすぐりエルモ。
ロボットは人に勝てるか?
人型ロボットの競技項目は、重量負荷、障害物競走、競走、サッカーシュート、バスケットシュート、重量挙げ、マラソンの7つある。重量負荷競技ではロボットが単3電池を2個入れた桶を背負って歩く。サッカーシュートは5回、重量挙げはCDを左右に3枚ずつつけた棒を持ち上げる。バスケットシュートでは、ゴールの位置を正しく判断して、精確に投げられるかどうかが試され、これらの点数の合計で勝敗が決まる。
「障害物競走のコースは当日まで分からず、非常に起伏に富んでいます。今回は重量負荷のコースに階段が設けられていて、しかも段の幅が3センチしかないのを見て、全チームが驚きました。私たちのロボットは4段まで上れましたが、他のチームは1段で転んでしまいました」と人型ロボットの動作戦略を担当した電機大学院の胡越陽さんは得意そうに話す。
人型ロボットが球を蹴る時に最も重要なのは巧みなステップである。淡江大学の人型ロボットは1本の足に7つのモーターを持ち、「自由度」は7に達する。最後の競走では、120センチ前進してバックするのに27秒しかかからず、大会記録を更新した。
ロボットにサッカーをさせるというのは、ロボット工学と人工知能の融合における一つのマイルストーンだ。現在、世界のロボットサッカー・リーグにはFIRAとRoboCupの二つがあり、毎年大会を開いて、各国が実力を競い合っている。
主に日米のロボット研究者によって組織されたRoboCupは、2050年に人型ロボットのチームが人間のサッカーチームに勝つという遠大な夢を描いている。
この夢は決して非現実的なものではない。1997年にはIBMのディープ・ブルーが、チェスの世界チャンピオン、カスパロフに勝利した。RoboCupは人工知能技術の発展のスピードから見て、50年あればサッカーロボットが人間に勝てるようになると考えているのである。
台湾でも、多くの理工系学生がサッカーロボットの開発に熱中している。ワールド・ロボット・オリンピアードもあり、小中学校にもクラブができ、ロボットは教育的価値の高い「玩具」とされるようになった。この分野こそロボットビジネスの主力市場なのである。

ロボットコンクールに熱中する学生は多い。写真は8月に国立科学工芸博物館で開かれたワールド・ロボット・オリンピアード国内予選の創意コンクール。写真は、自分で出火点を探して水で消火する実用的なロボットだ。
智恵のある玩具
ロボット玩具の最良の事例は、1998年にレゴ社とマサチューセッツ工科大学が共同開発した「レゴ・マインドストーム」であろう。この商品はビジネスウィーク誌でも高く評価された。
これはプログラミングをして動かす玩具で、マイクロチップを内臓した小型のコンピュータとも言え、動力システム、機構パーツ、各種センサーなど数百の部品から成る。従来のレゴと同様にブロックを組み合わせて昆虫や車などの形を作り、使いやすいインターフェースを通して動作をプログラムするというもので、教育界からも高く評価されている。毎年新しいバージョンが発売され、1セットの価格は1万元を超える。
ペットロボットの魅力も見逃せない。アメリカのマテル社は「セサミストリート」のマペット、エルモの動くぬいぐるみを作った。身体に触ると手をたたいたり、爆笑して転げまわったりする。10年前の商品だが、昨年もクリスマス前に品切れになった。
工業研究院の調査によると、世界の玩具市場は約700億米ドル、そのうち従来の玩具が550億、ロボットを含む電子ゲーム類は150億を占める。アメリカが全市場の36%、250億米ドルを占め、台湾市場は200億台湾ドルだ。

ロボットにサッカーをさせるには、識別システムによって球を見つけてゴールの位置を確認さけなければならない。だが、台湾のロボットは転倒したら人の手で起さなければならず、自分の腕で立ち上がれる日本のロボットとはまだ距離がある。
チップメーカーが先鋒に
玩具市場の特徴は、周期が短くて明らかなシーズンがあり、次々と新商品を出す必要があり、安全性が重視されるなどの点だ。競争の激しい玩具市場でロボットは大きなビジネスチャンスを持つが、台湾にチャンスはあるのだろうか。
「現在のところ台湾のロボット産業で売上があるのは玩具市場です。玩具は創意と価格と核心技術にかかっています」と台中精密機械センターの詹;炳熾総経理は話す。台湾のチップ設計技術の高さは世界に知られており、人型ロボットのサピエン、くすぐりエルモ、任天堂のWii、ソニーのPS3も台湾のVIA、Winbond、PixArt、Genesysなどのチップを採用している。台湾のチップ設計は玩具市場でも頭角を現し始めている。
昨年の台北Info Monthで注目されたのは携帯電話やノートPCではなく、米Ugobe社が開発した恐竜型ペットロボットPleoだった。華人の血を引く設計者のケーレブ・チュンは、映画「ジュラシック・パーク」の特殊効果を担当し、後に玩具デザインに従事、9年前に設計したファービーは世界で4000万個も売れた。
Pleoのサイトを見ると、この小さな恐竜は生命を持っているかのようだ。生後1週間の赤ちゃん恐竜は、嬉しいと頭を上げて尾を振り、悲しいと頭と尾を下げる。同類を認知でき、うっかりすると風邪をうつされることもある。1体1体に個性があり、愛情をもって育てれば明るく自信に満ちた恐竜に育つ。子育てと同じである。
Pleoは7つのマイクロプロセッサと14のモーター、38のセンサーを持ち、視覚と聴覚と触覚があり、表面は柔らかいゴムでできていて、本物のペットのようだ。発売前から大きな話題になり、製造は香港のJetta社と台湾のHONHAIが受託すると言われている。
「現在の台湾の問題は、玩具ブランドと強力な商品がないことです。より多くの人材と資源の投入が求められます」と詹;炳熾さんは言う。台湾はかつては玩具大国、現在はIT大国なのだから、玩具に新たな生命を吹き込み、チャンスを手にするには、最先端のロボット技術を融合させていかなければならない。
サイズ:高さ46cm、重さ3.1kg
性能:競技用。頭と腕、腰と脚などの関節に26のモーター、2本の脚だけで14のモーターを持ち、巧みに歩行できる。頭頂部には映像センサーがあり、視覚範囲は200cm。
歩行速度:1秒12cm
原価:15万台湾ドル

ロボットにサッカーをさせるには、識別システムによって球を見つけてゴールの位置を確認さけなければならない。だが、台湾のロボットは転倒したら人の手で起さなければならず、自分の腕で立ち上がれる日本のロボットとはまだ距離がある。

左上から、会話ができる赤ちゃんロボット、メールが来たら目が光るウサギ、アザラシ型ペット、くすぐりエルモ。

左上から、会話ができる赤ちゃんロボット、メールが来たら目が光るウサギ、アザラシ型ペット、くすぐりエルモ。