台湾とは二国間関係がない
これらインフラなどのリスクの他に、台湾企業は「特殊な情勢」を考慮しなければならない。
ミャンマーは長年にわたって中国大陸から援助を受けてきたため、台湾には友好的とは言えず、二国間関係も確立していないため、互いに代表処も設立していないのである。
政府のバックアップを持たない台湾企業は孤軍奮闘するしかなく、十年前にようやく「ミャンマー開拓ゴルフおよび愛心聯誼会」という名義で初めて台湾企業団体が結成され、メンバーは100人ほどだ。
聯誼会のメンバーによると、軍事政権による高圧的統治の時代は、人民の集会や結社を極力抑え込んできたため、台湾企業団体は「ゴルフ聯誼会」という名称で集まる他なかったのだと言う。
また、国と国との正式な関係がないため、これまで台湾企業や台湾人は、名義を借りたり、第三地を経由して資金を送るなどの方法を採るしかなく、名義人に資産を乗っ取られるといったトラブルが跡を絶たなかった。
聯誼会副会長の曾春雲は、ミャンマーへの投資を考えている台湾人に次のようにアドバイスする。名義を借りる方式はやめ、できれば十分な資金を用意し、現地でしっかりした人脈を作ってから、経験のある分野に取り組むべきだという。そうしなければ、以前の投資者のように「10人のうち9.5人は失敗して帰国せざるを得なくなる」と言う。
だが、今後はミャンマーの開放が進むに連れて、台湾との貿易や投資制限も改善されると期待できる。ミャンマーの多くの官僚と意見交換をした経験がある中華経済研究院の徐遵慈はこう話す。「台湾企業はベトナムに積極的に投資し、それがベトナムの発展に大きく貢献したことにはミャンマー当局も注目しており、台湾企業に同じような力を発揮してほしいと考えています」
中華民国外交部のタイ駐在代表である陳銘政は、ミャンマーの台湾企業の「正名」獲得に積極的に協力している。年末までには、「ミャンマー開拓ゴルフおよび愛心聯誼会」の名称を「ミャンマー台湾企業愛心聯誼会」へと正式に変える予定だ。また世界の台湾企業の市場開拓に協力する対外貿易協会もヤンゴンに事務所を設置する計画で、ミャンマーの台湾企業の境遇を改善していく。
ミャンマー人の素朴で善良な国民性は外国企業の投資をひきつける重要な要因である。写真は合板工場で働く現地の女性。