海に国境はない
2018年に発行されたアルバム「小島大歌」は、2019年にアメリカのインディペンデント‧ミュージック‧アワードで「最優秀コンセプトアルバム賞」に輝き、ドイツのレコード批評家賞ではアジアから初めて「アルバム‧オブ‧ザ‧イヤー」を受賞した。その後、彼らは四大陸の16ヶ国で50回以上のコンサートを開き、17万人が入場した。
コンサートでのアンコールの一曲目「Uyas Gerakun」は、台湾のタロコ族のPi Teyru Ukahによる口琴がメインメロディを奏で、サラワクとパプアニューギニアの口琴の音が重なり、マオリの戦士の舞ハカとバリ島のケチャがリズムを刻む。これらすべての要素が重なり合うことで、シンプルな口琴の音が大海原の波のように打ち寄せてくるのである。
小島大歌は太平洋をつないだだけではない。オーストロネシア人は太平洋からインド洋へも広がっている。BaoBaoはこんな話をしてくれた。マダガスカルにはヴァリハという民族楽器がある。音楽家のTarika Sammyによると、彼らの祖先がマダガスカルに移住してきた頃、ヴァリハには弦はなかったが、後に自転車が出現してから、そのブレーキのワイヤを弦にして演奏するようになったという。それが思いがけないことに、現地の人がマレーシアのサラワクを訪れた時、音楽家のAlena Murangの祖母によるPagongという楽器の演奏を聞いて驚いた。Pagongこそヴァリハの原型だったのである。まったく同じ楽器はフィリピンやインドネシアにもあり、台湾には記録はあるものの、今は失われている。
大海原の家族
アルバムの中の一曲「Naka Wara Wara To'o(智慧の言葉をあなたに伝える)」は、ソロモン諸島の横笛演奏家Charles Maimorosiaが古い言語で詩を書いたものだ。彼は、小島大歌への参加は大海原で家族を見出したような感覚で、この歌は家族のために書いたものだと語った。
さまざまな国のアーティストの母語はそれぞれ異なるものの、思いがけず「1から10まで」の発音が、イースター島から台湾のアミ族まで類似していて、ボディーランゲージも似通っていることがわかった。
音楽交流だけではない。これをきっかけにマダガスカルのSammyと台湾の戴暁君は世代を超えた友情を育むこととなった。コンサートが終わるとSammyは戴暁君の実家がある牡丹郷の石門集落へ行き、1ヶ月以上一緒に暮らすという。
屏東県牡丹郷で14年にわたってKapannan集落文化音楽フェスティバルを開催している戴暁君はこう話す。「私たちは非常に多くの類似点があることに気付きました。暮らしは大地から離れることはできませんが、土地や伝統音楽の消失という共通の問題にも直面しています」
パイワン族の歌手Sauniaw Tjuveljeveljは小島大歌のチームとともにバヌアツを訪れ、伝統の鼻笛を一緒に演奏した。