廃棄物再生の美学
ハーバード大学の大学院で建築学を修めた黄謙智だが、建築家の道は選ばなかった。「コーネル大学建築学科にいた時に、現在教えられている『建築』と、当時流行し始め、必須とされていた『グリーン建築』には大きな問題があると感じていました」と言う。真っ直ぐな性格の彼は、常に「カギとなる問題点」から考え始める。なぜ建築からリサイクル事業へと転換したかと問うと「私の大学の卒業論文の趣旨は『自然と人と構造物(建築を含む)の関係』でした」と語る。
その論文の結論は「ゼロ‧ウェイスト」——「この結論への最良のソリューションは『素材の循環再利用』でした」と言う。ここから数年後にMiniwizと、世界を覆すゼロ‧ウェイストへのソリューションが生まれたのである。
工業時代からテクノロジーの時代まで、さまざまな素材はすでに研究しつくされてきた。環境のための資源回収とリサイクルも長年にわたって行われてきたが、その主な方法は廃棄された材料を粒子状にして新しいものに作り直すという方法である。例えば、医療用のプラスチック廃棄物は工事現場のカラーコーンや扇風機の羽などに再生される。「しかし、再生された製品に十分な需要がなく、消費市場に入り込めなければ、それも形を変えたゴミに過ぎません」と黄謙智は言う。
そこで、本当にゼロウェイストと循環経済を実現するために彼が考えたのは「回収した素材を全く新しい素材に作り変えることです。そのためには本来の素材より使いやすく、耐用性も高く、しかも将来再びリサイクルできるものでなければなりません」と言う。
そこで「回収素材オープンデータベース」が生まれた。膨大な量の素材研究と実験を通して構造強化と特殊な組み合わせを追求する過程で、12の特許を取得し、回収した素材から新たな素材を開発した。そしていくつかの製造工程を組み合わせることで、再生素材の実用性と耐久性を高めていったのである。
こうしてデータベースを拡張していくことでMiniwizには堅固な基礎ができた。「例えばプラスチック素材の場合、その特性は6種に分けることができ(A)、それにミックスできる素材の数(B)、必要な製造工程の数(C)があり、これらを掛け合わせると5桁の新素材が得られます」と言う。A×B×Cで得られる新素材は、衣料品、家具、内装‧建築材料まである。しかも、このAは回収した1種類の素材に過ぎない。
こうして素材の問題は解決したとして、顧客への「用途」の提案はどうするのだろうか。
Miniwizのオフィスに陳列されている品物は、すべて回収した廃棄物をリサイクルした素材でできている。(林旻萱撮影)