文化外交で国のブランドイメージを
しかし、台湾と中国大陸は言語も同じであるため、タイの一般の読者や出版業界は、台湾に対して曖昧なイメージしか抱いていないのも事実である。今回設置した台湾テーマ館やCCCバーチャルエリア、文化芸術イベントなどは、いずれも台湾への理解を深めてもらうためのものだ。
翻訳の傍ら、出版社も設立した王道明は、翻訳家としてデビューしたのも台湾の作品で、十数年来台湾とは切っても切れない縁がある。彼の出版社では現在、侯文詠の三部小説『霊魂擁抱』『危険心霊』『白色巨塔』を出している。王道明は本の表紙にわざわざ台湾の地図を入れて台湾の作品であることを強調している。さらに台湾の文化部からの出版補助も得たため、ブックフェアのたびに、教育や医療関係者に無料で配布するなどして、タイの人々の台湾社会に対する認知度を高めている。
作家の対談でタイと出会う。
タイの旺盛な文化的エネルギーのおかげで、バンコク国際ブックフェアへの参加が台湾に大きな収穫をもたらした。
今回のブックフェアには、台湾の作家としてSakinu Yalonglong、紀大偉、何敬堯、張西、林立青、陳美燕、侯文詠、許育栄、邱承宗らが招かれた。先住民文学、同性愛文学、ファンタジー、オンライン小説、絵本、青少年文学など、さまざまなジャンルの作家が招かれ、単独の講座からタイの作家との対談まで行なわれた。こうして台湾文学の多様性が際立ち、交流の中で、さらに前進するエネルギーが生まれたのである。
バンコク国際ブックフェアはまるで大晦日のカウントダウンイベントのようににぎわい、多くの人が次々と本を買っていく。さらに、電子ブックリーダーのメーカーや、宅配業者のブースもあり、多くの作家は目を見張った。
しかし、作家の林立青の観察では、バンコクのブックフェアでは商品性が強調され、販売量は大きいが、台北のブックフェアのような文芸サロンや作家との対面の機会は少ない。こうした点で台湾とタイはさらに交流できるのではないかと林立青は指摘する。
また、何敬堯は、ブックフェアでは各国がそれぞれの魅力を競い合い、それぞれの特色を打ち出していて参考になったという。現在彼は妖怪をテーマに台湾文化の独自性を表現しているが、この方向は間違っていないことが確認できたという。会場でよく売れている絵本や児童書などを見て、妖怪をテーマに児童書や絵本も展開できることに気付いたそうである。
ネットで作品を発表してきた小説家の張西は、SNSを利用して見知らぬ人にインタビューし、そこで得た物語を小説の題材にしている。張西と対談したタイの作家Round Fingerは、張西の創作方法に刺激を受け、自分もさまざまな方法で感動的な物語を発掘したいと語った。
来場した読者はたくさんの収穫を得、出展した出版社はビジネスチャンスをつかみ、作家やデザイナーも異なる文化との出会いでそれぞれ何かをつかむことができた。11日にわたるバンコク国際ブックフェアは4月5日に幕を閉じたが、台湾にとっては南への新たな扉が開かれた。交流の物語が、いま始まろうとしている。
タイのベテラン翻訳者である王道明は、華語書籍を百冊以上翻訳しており、台湾と中国大陸の両方の出版市場にも精通している。
宗教と現代アートが融合して新たな美が生まれる。タイのデザイン力の高さを感じさせる。
タイの社会は豊かな包容力で知られている。ブックフェアでも世界各地の書籍やクリエイティブ商品が展示されていた。
タイの独特の文化がクリエイティブ産業を育んできた。その文化は、長年にわたって民間で蓄積されてきたものである。