援助が徒に?
しかし大型家電やパソコン、自動車などの廃棄処理は非常に難しい。今年8月、ニュージーランドの海軍学校は、ツバル離島での演習実施と引き換えに、車道にまで広がったゴミの山を回収し、大型廃鉄を圧縮する機械を提供したが、これも根本的な解決にはならない。
呉郁娟さんによると、台湾と韓国はツバル政府に多数のパソコンを寄贈し、韓国は同国漁業省にバイクも提供した。行政効率アップのための善意からだが、島という環境ではこれらの機器は2年で錆びて使えなくなる。「物資を寄贈する前に、後の回収や物資の必要性をよく考え、トラブルメーカーにならないようにする必要があるでしょう」と言う。
台湾の駐ツバル大使・田中光氏によると、オーストラリアやニュージーランドの援助は人材育成と理念普及へと方向転換し、日本の援助はソフトとハード両面で、埠頭建設と同時に珊瑚礁保護にも取り組んでいる。台湾も2年前に「マネー外交」をやめてから、ツバルでは「持続可能な発展」を目標とし、漁民訓練や台湾留学支援のほか、農業や堆肥、新エネルギーなどの強みを活かした支援をしている。最近は離島の民家に太陽光発電の電灯を設置した。「南洋の島国では環境保全と資源の持続可能な利用を最優先させなければなりません」と言う。
「星砂」の物語
島の水没という最大の危機に関しては、今も多くの議論がある。これに対して日本の国際協力機構JICAは、フナフティ島の海岸の生態破壊状況を調査し、これを改善する方法を研究してきた。
ツバルに駐在するJICAの松館文子さんはこう説明する。昨年終了した海岸線の調査の結果、沿岸では人為的汚染が進み、有孔虫(その死骸が砂浜の砂の8割を構成する。通称「星砂」)の数が減少しており、そのために海岸線が後退していることが分った。そこで、JICAではバイオ技術を用いて有孔虫を増やし、砂浜を再生させる計画を進めている。
昨年4月、JICAとツバルの漁業局は共同で実験室を設け、すでに有孔虫の繁殖に成功している。今後4年をかけて大量繁殖、運搬、堆積の三段階で進めていく。これは太平洋諸島でも初めての試みである。
「ツバルの環境と社会の変化は早すぎ、人々の環境意識と政府の管理能力の向上を急ぐ必要があります。礁石の採掘をやめ、分解できないゴミを減らし、車やバイクも減らさなければ、環境の被害者と加害者という二重の問題は解決できません」と、ツバルに来て1年になる松館さんは話す。
フェスティバルへの期待
今年2月26日〜3月1日、交通・観光省と多くの海外援助組織が共同で「キング・タイド・フェスティバル」を開き、首都はにぎわった。この活動の目的は気候変動と文化遺産保存の意識を高めるというもので、ツバル政府と外国援助団体の長年の話し合いの末に得られた、共通の反省と言えるだろう。
活動には離島の学校の生徒も招かれ、ゴミの分類、気候変動、水資源管理、生物多様性などの説明を聞き、さまざまなイベントに参加した。
フェスティバルの3日目、前述の津波警報が発せられ、外国から来た記者は衝撃を受けた。「逃げるところなどないことが、よく分ったでしょう」とイベント主催者は言った。
フェスティバルは主催者も参加者も楽しく学べるものであった。この土地で心を開いて暮らす人々は、すでにツバルに新しいエネルギーを注ぎ、機会と挑戦に満ちた未来へと向い始めている。