再生可能エネルギーの中で、すでに最も技術が成熟し、コストも化石燃料発電に近付いているのは風力発電である。クリーンで安いという特色から、世界でも成長が著しい。
だが、風力には「天候しだい」という限界がある。台湾は風力資源に恵まれ、風力発電にふさわしいのに、その発電比率が全発電量の1%に過ぎないのはなぜだろう。大きく成長する空間はあるのだろうか。
台湾西部海岸に並ぶ大型風力発電機は高さ70メートル(23階建てに相当)で目を引く。2010年現在、台湾の風力発電機は200基、設備容量は約300MWで全電力の1%を発電している。工業研究院とドイツ系InfraVest社の試算では、台湾の風力発電は10〜16倍の成長が見込めるという。
さらに洋上風力発電という処女地もある。現在、中鋼機械、大同、フォルモサ重工など18社が立地開発、部品開発、海上建設工事などの受注を目指して「台湾オフショア風力発電連盟」を結成し、この数兆元に上る市場を狙っている。

風力発電所と電力系統をつなぐと、送電網や配電網の容量に限界があってさまざまな問題が生じるため、風力発電や太陽光発電の増加にともなって電力系統も変えていく必要がある。
オフショア風力発電連盟の発起人で上緯企業(Swancor)の董事長である蔡朝揚によると、同連盟では3ヶ所の風力発電所を開発する予定で、まず苗栗県後龍渓河口の沖合2〜3キロの最初のモデルファームに60基、1基5MW(陸上の2〜3倍)の大型発電機を設ける。
海上は風力が陸上より強い。年間平均フルロード相当時間を3800時間とすると、この約300MW規模の「海鼎風力発電所」は年間1.1GWhの電力を供給でき、2010年の総発電量の1%に達する。政府の計画通り2025年までに海上に3GWの風力発電機を設置すれば、総発電量の10%になる。
蔡朝揚によると年間平均フルロード相当時間というのは、一年のうち発電機をフル稼働できる時間数で、台湾西海岸の平均は約2500時間、澎湖では3500〜4300時間に達し、世界でも1〜2を争う風力だ。ヨーロッパでは2200時間でも良い方なのである。
風力発電所経営には「早い者勝ち」という特色がある。風況の良い場所を獲得した者ほど有利となる。陸上では、フルロード相当時間が1800時間を下回ると投資回収は困難となる。
風力発電機は風速3〜10メートルでも発電できるが発電量は少ない。そのため風力発電にふさわしい場所かどうかの判断材料に「容量因数」がある。これは実際の年間発電量が設備容量に占める割合を指す。台湾の風力発電の平均容量因数は29%でイギリスと日本に次いで高く、ドイツは17〜23%、澎湖では40〜50%に達する。
蔡朝揚によると、台湾海峡は東の台湾中央山脈と西の福建省武夷山脈に挟まれて風力に恵まれている。また今年、政府は海上発電からの買取価格を昨年の1度4.2元から5.56元に引き上げたため、外国や中国大陸の企業も海鼎発電所への投資を計画している。そのビジネスは500億元と見られる。

世界有数の風力資源を有する澎湖諸島は「国際低炭素島」への発展を目指し、2015年までに全島人口5万人分の電力需要をすべて風力でまかなう計画を立てている。官民共同でエネルギー会社を設立し、風力発電の余剰電力は台湾電力に販売していく予定だ。
海上の真珠と喩えられる澎湖諸島はさらに風力に恵まれていて「国際的低炭素島」としてグリーンマネーを稼ごうとしている。今年6月、澎湖県は民間と合弁で澎湖エネルギー科技公司を設立した。出資比率は県が49%、民間が51%。民間のうち県民が10%を占め、土地提供または1株10元で株主となる。ドイツやデンマークのメーカーや台湾の東元も投資に興味を示している。
澎湖の低炭素島計画は4段階に分かれる。2015年までに124MWに達すれば、全島人口5万余人の夏のピーク時の電力需要もまかなえる。現在、澎湖諸島の火力発電コストは1kWh当り8元に達し、台湾電力の年間の赤字は十数億に達する。そこで風力発電所の完成とともに火力発電所を廃棄する考えだ。経済部は長さ60キロの高圧海底ケーブルで台湾の電力系統と結び、風のない時には台湾から電力を送り、風のある時には余剰電力を台湾に送電することにしている。
では、台湾電力に売れる「余剰電力」はどれほどあるのだろう。澎湖のピーク時の電力需要は75MW、最低重要は35MWで、設備容量124MWの容量因数を50%とすると、年間540MWhの発電が可能だ。

2009年にコペンハーゲンで開かれたCOP15のスローガンは「二酸化炭素排出削減のために、可能な限りの行動を」というものだ。
大同大学電機研究所教授の陳斌魁によると、ウィンドファーム経営が成功するためには、風況が良好でフルロード相当時間数が多く、風も安定していなければならない。例えば、一方に断崖のある場所は風は強いが風向は不安定で風の強弱が一定しない。こうした場所では発電機に金属疲労が生じやすく、故障が頻発し、寿命も短くなるため採算は取りにくい。
台湾ですでに風力発電所を経営している企業の中で、InfraVest社はドイツの技術支援を有するため、苗栗、台中、彰浜などで非常に良好なエリアを選び、設備も優れていると陳斌魁は言う。台湾電力は数年の模索を経て風力発電を掌握しつつあるが、まだ経営効率向上に努める必要がある。
ドイツ系InfraVest社から見ると、台湾は風力資源に恵まれているが「政府の決意」が不十分で、再生可能エネルギーの将来性に対して消極的な態度を採り、その可能性を過小評価しているという。だが、同様の状況は他の国でも見られる。
InfraVest副総経理の王怡雲によると、各国の再生可能エネルギー発展予測は、実際の発展状況を大きく下回っている。ドイツの場合、著名研究機関の予測では総電力の4%を超えることはないとしていたが、実際には昨年の段階ですでに16%を超えている。権威ある国際エネルギー機関(IEA)の予測も実際とは大きなギャップがある。その原因は、分散型発電所の設置は弾力性が高く、技術的には大きく進歩し、量産によってコストが低下したこと、そして政策的な支援などがある。
2000年から数百億元を投じて台湾でウィンドファーム経営に取り組んできたInfraVest社は、一昨年「再生可能エネルギー発展条例」が遅々として成立しないため、このままでは台湾から撤退する他ないと公言したことがある。台湾政府の政策に対する彼らの最大の批判は、台湾電力による買取価格がkWh当り2元という点だ。再生可能エネルギー発展条例が成立しても2.38元に上るだけで、誘因は十分ではない。InfraVestがこれまで利益にこだわらずに持ちこたえてきたのは「台湾の風力発電は必ず成功する」ことを証明したいからだという。
しかし、これに対する不満の声もある。InfraVestは政府の協力を得て林務局や国有財産局などの所有する風況の良い土地を低価格で借り受け、彰浜工業区に風力発電所を設けた時には企業からの反対もあったが、政府が間に立って交渉するなど、InfraVest社はさまざまな面で「優遇」されているからだ。
いずれにせよ、InfraVestが台湾の風力発電開発をリードしており、その発電効率は台湾電力より高く、業界に競争をもたらしていることは否めない。
風力発電はクリーンで安いが「夏のピーク時には風が弱く、風の強い冬場の電力需要は大きくない」という課題がある。これについてInfraVestは、台湾の夏の風況はドイツより良いという。再生可能エネルギーの特色は「電力供給」というより、電力系統への需要を低下させる点にある。台湾では午前8時に風が吹き始め、午後5時から弱くなっていくので、その発電によって現地の電力系統の負担を軽減することができる。
課題1:電力系統の改造現在台湾における風力発電量は少なく、電力網の安定に影響を及ぼす15〜20%にはまだ距離がある。しかし、分散型電源は増加傾向にあり、電力網の改造が必須となる。
大同大学電機研究所教授の陳斌魁はこう説明する。電力系統は発電、送電、配電系統から成る。火力、原子力、水力などの集中型電源はそれぞれの設備容量に従って電圧を上げ、超高電圧で送電し、変電所で電圧を下げて末端の需要者に届けられる。それは人体の動脈や静脈、毛細血管のように綿密なネットワークを形成している。
問題は、中間の送電網と末端の配電網のそれぞれに容量制限がある点だ。中小型の風力発電や太陽光発電が配電系統に接続され、発電量が配電系統の容量制限を超えた時には電力供給の質に影響を及ぼす。また、大型風力発電所と変電システムを接続して高圧送電網につなげた時にも送電系統の容量上限を超えることとなる。
課題2:信頼性管理こうした送配電の問題の他に「信頼性」の課題がある。風力発電所の風が急に止まった時、瞬時に他の電力で補わなければ、電圧と周波数が正常値を離れてしまうのだ。
電圧が不足すると電灯は暗くなり、モーターの出力は下がる。周波数も60Hz前後を維持しないと電気設備が「不安定」になる。これが生産ラインなどで生じると、生産能力や品質に影響を来すこととなる。
米テキサス州の例を見よう。テキサスでは風力発電が州の発電量の8%に達する。風力発電所はテキサス西部に集中しているが、需要量が多いのは東部と南部で、発電所の風が突然止まった時は即刻ほかの電力で補わなければ「需給バランス」が取れなくなる。電力系統の電圧と周波数の調整が困難になった時には、電力会社の技術者はすぐに上部に報告する。このように電力の「信頼性」管理は非常に厳格なものなのである。
台湾の電力網は集中型の大型系統で、発電所の故障などがあると広い範囲に影響が出る。陳斌魁は、台湾も分散型の「マイクログリッド」を構築するべきだと考える。マイクログリッドは大型系統と接続することも、独立させることもでき、どこかの発電所で風が止まった時も、その影響を小さな範囲にとどめることができる。マイクログリッドは「スマートグリッド」構築のための基盤となる。
風力発電機の環境への影響風力発電には大きな期待が寄せられているが、不安もある。環境保護団体は大型風力発電機に態度を保留している。
ドイツの最新のエネルギー計画6項目の中に、50億ユーロを投じて北海とバルト海と国内各地に大型風力発電機を設置する計画があるが、緑の党は、高さ100メートルを超える大型風力発電機はドイツの田園風景を破壊し、騒音公害も起すとして反対運動を計画している。
「台湾は世界第二の生物多様性を誇ります」と台湾緑党の潘翰声は言う。台湾は冬の渡り鳥の通り道で、その西海岸に巨大な風力発電機が並ぶと気流が乱れて、鳥の飛行や生息地選択に影響を及ぼすおそれがある。洋上の風力発電所も絶滅に瀕したウスイロイルカの生存を脅かすこととなる。
では小型風力発電の方が分散の精神にかなっているのか。
小型風力発電機に関してはまだ世界公認の定義がなく、アメリカでは容量100kW以下を、他の多くの国では10〜50kWを小型とし、10kW以下をマイクロ風力発電機としている。
マイクロ風力発電機の開発と生産を手掛ける新高能源(Hi-VAWT)総経理の陳震艮は、風力発電機の大小の相違を次のように説明する。大型は集中型電源で、大規模電力系統で送電するが、小型は分散型電源で110Vや220Vの電気をそのまま使用でき(高価な蓄電池が必要)、大規模電力系統とつなぐこともできる。
大規模電力系統が届かない僻遠地では、小型風力発電の独立性が役に立つ。モンゴルの僻遠地域でも小型風力発電機が用いられている。風が強く、人口密度の高い新北市の林口も小型風力発電に適しているという。
注目される小型風力発電陳震艮によると、ヨーロッパでは再生可能エネルギーを三段階に分けている。第一は化石エネルギー依存からの脱却を目指すこと、第二は各国の条件にかなった再生可能エネルギーを発展させること、第三は目標を定めて助成措置によってグリーンエネルギー産業を発展させることである。陳震艮は、台湾のエネルギー政策は一貫していないと指摘する。初めは大型風力発電は不安定だとして消極的だったところにInfraVestが参入して有利な場所を占め、台湾電力も乗り出さざるを得なくなった。また、台湾の大型風力発電機技術は競争力がなく、輸入すればいいところに政府は資金を投じて研究開発を推進しており、他の再生可能エネルギーに回すべき予算を取っている。
「中小型風力発電こそ将来が期待され、しかも太陽光発電との相互補完で安定供給できるのです」と陳震艮は言う。新高能源はすでに世界初の垂直軸型風車の国際認証を得ている。台湾の小型風力発電機技術は自主性が高く産業チェーンも強固なので、政府はこの分野に注目するべきだと陳震艮は訴える。
「再生可能エネルギー発展条例」が成立して小型風力発電の買取料金が1kWh当り7元に決まっても買取方法は決まっていない。1kW当り17万元の製造価格で計算すると3kWの小型風力発電でも資金回収には十数年かかることになる。買取価格を1kWh当り12元まで上げなければ急速な普及は期待できないだろう。
これまで澎湖では冬の季節風が強すぎて、観光収入が入るのは半年だけだったが、これからは北東からの季節風が吹くたびにグリーンマネーが入ることとなる。風力発電の島が実現すれば、クリーンなエネルギーで収入を得ることができるようになるのである。