台北機廠の価値見直し
今年7月、台北市文化局文化資産審議委員会が「原則採択」を決議し、台北機廠で1935年に使用開始した組立工場、鍛冶工場、動力室を古跡に指定、総事務室、ディーゼル工場、客車工場、南北移(吊)車台を歴史的建築物に登録することになった。
組立工場は現在の電気機関車と電車の整備場で、敷地面積6800㎡弱、建坪8800㎡を超える台北機廠最大の作業場である。長さ167m、高さ20.4m、幅23.8mの大空間は、台北機廠の特色になっている。ボルトで繋がれた鋼柱で支える鉄骨建築の、構造の安定性と建材の耐久性は、台北機廠の職員も「工場建設以来、何の補修もしていない」という。
組立工場の採光も特色のひとつである。採光トラスの構造は、屋根の中心軸部分を一段高くし、左右両側にガラス窓を設けて自然光を取り入れている。
鍛冶工場は補給作業区として整備に必要な部品を主に生産する。工場内にはスチームハンマーが3台あり、最も文化財的価値が高いといえる。1台は清朝機器局が1889年に購入し、日本統治、中華民国復帰を経て今まで使用している。
動力室は台北機廠の心臓である。作業場に蒸気動力を供給し、創業以来休むことなく、毎日午後の退勤時間が近づくと、余剰の蒸気が浴室へ送られ、男性職員が一日の油汚れを洗い流した。
動力室傍に高く聳える煙突も台北機廠の目印である。動力室と共に古跡指定が「原則採択」された。
台北市文化局台北機廠文化財審査会が行った「原則採択」の決定は、鉄道ファンが先手を取った形になった。後は行政手続きを済ませれば、台北機廠の文化財保存に法的根拠が生れる。台北市市政会議が文化局文化財審議委員会の結論の最終確認を行えば、2000年に古跡指定された従業員浴場に加え、台北機廠内の直轄市定古跡は4箇所となり、保存される産業文化の内容は非常に豊かになる。
『文化資産保存法』は「古跡は所有者、使用者または管理者が管理保全する」と規定し、「古跡は原状形態と工法を保存すべきである」「建設工程及び開発行為は、古跡の完全性を破壊してはならない」とも定めている。これによると、組立工場など新たに3つの大面積作業場が正式に古跡指定されれば、法に従い原状を維持することになり、台北機廠を柔軟に商業利用できる余地が大幅に縮小するから、台鉄は極めて厳しい見方をしている。
更に、台鉄が古跡に必要な整備と補修、再利用設計改修、開放空間整備費用を見積ったところ、合計24.27億元に上る。年6億元の運営費用は含まれていない。負債に苦しむ台鉄には極めて厳しい。
8月31日に行われる古跡指定公聴会で、挽回の余地は少なくても台鉄は奮闘する構えでいる。
台北機廠の浴場は2000年に直轄市の古跡に指定された。この幾何学美は1930年代の世界の建築の潮流を反映している。