子供の飛翔に寄り添う
これはNPO台湾生態登山教育協会(以下「登山学校」)が2019年から始めた青鳥壮遊共学プロジェクトである。青鳥という名称は、参加者が子供だからだ。子供たちは、これ以前にすでに亜成長プロジェクト——「関心を寄せるべき青少年」のための野外学習活動にも参加している。
「関心を寄せるべき青少年」というのは、家庭が機能していなかったり、長期にわたって否定されたりしてきたため、自暴自棄になり、外部との間に壁を築いてしまった子供を指す。
「山を学校と見なす」というのが協会の考えだ。彼らは、山の素晴らしさを感じれば、子供の人生にプラスの力がもたらされると信じている。理事長の劉純宇によると、亜成鳥プロジェクトに参加した子供たちは、皆が登山好きではなかったが、後に感想を話し合った時に、登山旅行のことを目を輝かせて語ったという。
山では、天候、体力、仲間とのコミュニケーションなどが課題となる。全身がベタベタになってもシャワーも浴びられず、重いリュックを背負って斜面や岩壁を登らなければならず、時には子供たちの間で衝突が起きることもある。亜成鳥プロジェクトに参加したADHD(注意欠陥・多動性障害)の子供は、薬のせいでぼんやりしがちで、小柄なので遅れやすく、自分を守るために乱暴な口をきいていた。身体は疲れ、情緒は不安定で、最後は泣きながら歩いていた。だが「山というのは特別な場所で、歩きたくなくても歩かなければなりません」と劉純宇は言う。平地では駄々をこねる子供も、山では現実と向き合って歩かなければならない。劉純宇は、子供たちの内面の挫折に寄り添い、疲れたら休ませ、服が濡れていれば着替えさせる。「歩くのが遅くてもいいのです。前進さえしていれば、どんなに遅くなっても到着するのですから」
大人の足なら2日のルートに、亜成鳥プロジェクトでは4~6日かける。山を登るだけでなく、途中でいろいろな活動を行なう。例えば、子供を一人にさせて一年後の自分に手紙を書かせたり、交代で一日のリーダーを任せ、テント張りや炊事の手配をさせる。日程を長くしているのは、余裕をもってコミュニケーションをとり、感情を吐き出させるためだ。目的地に到着することより登山のプロセスの方が大切なのである。
仲間が歩けなくなったら、催促するのではなく、勇気を出して背中の荷物の一部を持ってあげるなど、大人たちを感動させることもある。相手の立場に立って助け合うという能力は、学校の授業で学べるものではないが、課題に直面した時には非常に重要な力となる。
台湾生態登山学校は、亜成鳥プロジェクトで子供たちを山に連れていき、テントの張り方や地図の見方などを教える。チームが寄り添う中、子供たちは命の力と勇気に気付く。