五大趨勢――資金、愛、生活
数千万もの資本金がなくても生活の中に起業のアイディアを見出すことはできる。以下に、専門家や学者の観点を五つの趨勢として整理しよう。
1.ネット起業はコミュニティ重視――
投資先を求めるベンチャーキャピタル
クラウドで各種のサービスを購入できる今日、スマホの普及はモバイルビジネス、モバイル広告、モバイルコミュニティの商機をもたらし、企業のマーケティングにも変化が生じた。「コンテンツ、ソーシャルネットワーク、ビジネス」の三つの概念をうまく利用し、ノートPCひとつでビジネスができる。
シリコンバレーの企業がガレージから誕生したように、資金ゼロでネットコミュニティを運営して利益を上げ、投資家から資金を集める。あるいはネット上で小口資金を募集することも可能になり、資金ゼロの起業が可能になった。
2.第二創業、二代目による新ブランド創出
1970年代に大量に生まれた中小企業は現在、二代目に引き継がれる時期にあり、これまでの受託生産を主とした製造業は、異業種統合によるブランド戦略を考え始めた。そこで、二代目経営者による「第二創業」が盛んになっている。
第二創業に取り組む企業後継者の多くは裕福な環境で高等教育を受けてきたため、ブランドや文化的意義を思考の動力としている。
オーガニックコットンの服飾ブランド「許許児」の場合、父親の許志栄は生地貿易を行なう黒獅実業公司を営み、布地に関する豊富な知識を後ろ盾に、デザイナーとなった娘・許雅涵のブランド創設を支え、企業の業態転換を進めている。
3.ソーシャルエンタープライズで社会貢献
昨今は利益を目的としない起業家も増えている。人類と地球を愛し、弱者を支え、仕事を通して生きる意義を見出そうとする。この理念は、慈善事業が盛んな台湾の伝統ともマッチするため社会的企業に商機があり、持続経営が可能となる。
2012年に教育部の「U-START計画」の助成金を得た「三明治工」は、「三名志工」(3人のボランティア)と同じ発音で、創業者は台北芸術大学の3人の学生だ。彼らは新北市八里楽山療養院でアートセラピーのボランティアをした後、アートセラピーの特殊教育教具や公益クリエイティブデザインなどを展開する公益起業の道を選んだ。
4.文人の企業――「製品ではなく、作品を作る」という誤った考えを修正
文化クリエイティブ産業が盛んになり、ビジネスの性質も変ってきたが、彼らが陥りやすい問題は、利益を求める一方で金の臭いを嫌うことだ。彼らは自分が作るのは「作品」であって「商品」ではないと考えがちである。
だが、ここ数年の発展を経て、夢を追う人々も地に足を付けるようになり、多くの創作者は「自分を表現するだけでは消費者の共鳴を得られるとは限らない。共鳴を得なければ産業として成り立たない」と考えるようになった。
5.生活への愛が大きなトレンドに
最近は裏通りに個性的なショップが並ぶ。デザイン、コーヒー、服飾などを販売するSOHOが標榜するのは、自分の生活が成り立ち、消費者は創意を買うというものだ。彼らは大きな野心を抱いているわけではなく、消費者の支持を得て働きながら生活を楽しみたいと考えている。
台北東区には中古車を改造したクリエイティブショップが出ている。創業者は自分でデザインしたアクセサリーを売り、他のデザイナーの商品も扱う。小さな交流の場だが、高い家賃を払う必要もなく、自分のスタイルで長く経営できる。
人々の暮らし方が変ったことで新たな消費とビジネスチャンスが生まれている。台北で最近流行しているのはアメリカン・ダイナー風のレストラン。地産地消のオーガニック食品の店も人気がある。