オルターナティブ医療の資格
実際、国内伝統の療法であれ、外来のものであれ、巷にあふれるオルターナティブ療法の効果は誇張して宣伝されていることが多い。そのためにハイドロセラピーでは、強すぎる水柱に長く当たって頚骨を傷めたり、脊椎マッサージで卒中を起こしたりといった事故も報道されている。
「耳燭」で耳鳴りが治り、記憶力が良くなるという点について、耳鼻科の専門医はこう指摘する。外耳道には頚椎神経や迷走神経、舌咽神経、顔面神経などが通っているため、ロウソクの熱がこれらの神経を刺激することはあるかも知れないが、それによる治療効果という点には疑問を抱かざるを得ない、と。耳燭療法を受けて具合が良くなったと感じる人もいるだろうが、それはエステサロンの穏やかな照明や心地よい音楽によってリラックスし、リフレッシュできた結果かも知れないのである。
我が国の医療法規には「オルターナティブ医療」や「民俗療法」といった言葉は使われておらず、ただ「医療管理下に置かれない行為」という表現があるだけだ。つまり、接骨や内服薬には触れず、機器を用いず、浸入性の医療行為でないものは、すべて管理下に置かれないのである。これらには、薬草外用、推拿、按摩、指圧、刮痧、足裏マッサージ、収驚、神符、香灰(神仏に供えた線香の灰を服用する)、カッピング、気功などが含まれる。
衛生署(厚生省に相当)中国医薬委員会の林宜信・主任委員によると、衛生署が民俗療法を管理しないのは「国民の邪魔をしない」という原則からだと言う。一般の人が自宅で刮痧や推拿をしても、特に問題が生じることはないからだ。しかし、業者が治療効果を誇大広告するようなことがあれば、これは検討しなければならない。
しかし、管理する法規がないため、民俗療法を行なう人の質やレベルはさまざまで、その点が心配される。オルターナティブ医療を積極的に受け入れている人の多くも、その医療環境には満足していない。
推拿を受けることに抵抗はないというライターの林さんは、ある時、家の近くのクリニックで脊椎矯正をしてもらった。30坪余りのクリニックには患者があふれ、中央に寝椅子が3つ置いてある。若い推拿師が20分ほどかけて、彼の頚椎や背中を押したり揉んだり、腕を捻じ曲げたりする間、自分の骨がゴキゴキ鳴るのが聞こえ、筋肉がほぐれたような気がした。しかし翌日、目を覚ますと、頚椎が以前より凝っているように感じたという。
正規の病院でも医療過誤の問題がよく生じるように、オルターナティブ医療にも問題は多々ある。一般に広く受け入れられている療法については、担当の政府機関もその存在を無視できない。
足裏マッサージの場合、スイス人の呉若石(オイグスター)神父が20年にわたって台湾で積極的に推進してきたことから、各地に講習クラスが設けられ、多くのマッサージ師を育ててきた。しかし、彼らには今も合法的な資格はない。1991年、オイグスター神父は足裏マッサージに従事する業者10数人とともに「中華民国足部運動健身協会」を組織し、政府内政部に登記した。しかし、内政部はこの協会をスポーツ団体に分類してしまった。その後の働きかけを経て、1993年にようやく衛生署がこの協会を、医療管理下に置かない伝統療法に分類し、足裏マッサージに従事する人々は、ようやく無資格医として取り締られる心配がなくなったのである。
現在、中国大陸や日本、韓国、アメリカにはプロのマッサージ師の免許制度がある。台湾の「足部反射区健康法協会」も、オイグスター神父とともに教育や評価や免許制度などの制定に取り組んでいる。
早起きのお年よりは、早朝の公園で音楽にあわせて呼吸をしながら手足を動かす。