強い側と弱い側
かつての植民地経験においても、現在の文化商品の発展でも、台湾は文化接触において常に弱い側にあり、輸入する側に立ってきたと陳其南さんは指摘する。「しかし、東南アジアからの労働者や配偶者に直面した時、私たちの位置は比較的優勢な方へと変わります。少なくとも経済や科学技術や創意などの発展においては比較的優勢にあるからです。これは私たちにとって新しい経験なので、態度の調整を学んでいかなければなりません」と言う。
「文化と文化の接触において、衝突や誤解が生じることは免れられません」と話すのは世新大学で「クロス・カルチュラル・コミュニケーション」の講座を持つ管中祥副教授だ。その授業の中で、学生たちが外国人労働者や移民に対して「上から見下ろす」ようなゆがんだ視点を持っていることに管副教授は気付いた。
「学生たちは、彼らが金を稼ぐために来た代替性の高い契約労働者だと考えており、しかもそのイメージを、気の毒な人と悪い人という簡単な二つに分けてとらえているのです」と言う。マスコミが報道する東南アジアからの労働者は、虐待されたり、雇用主からいじめられたりしているか、そうでなければ金を盗んだり、喧嘩などの騒動を起こしたりしているからだ。この二つのイメージが学生たちの中に根を張っていることに管副教授は大変驚いたという。
「これは非常に典型的なマスメディアの視点の歪みです。衝突面だけを選択し、水平な視点から彼らを見ることができないのです」と管中祥副教授は言う。そこで学生たちにこの新しいエスニックグループを理解させるために、管さんは外国人配偶者のグループである「南洋姉妹会」のメンバーを招き、クロス・カルチュラル・コミュニケーションの授業で学生たちにコミュニケーションの機会を与えたところ、少なからぬ反響が得られた。
「世界中で人の移動がますます頻繁になっているのに、多くの人はこうした外来の異文化と交流する準備ができていません。これは非常に残念なことです」と管さんは言う。
「長年にわたって国際化や国際交流を論じてきたのに、私たちの世界観は今も白人の世界に偏っています。政府は何年も前から『南向政策』を打ち出してきましたが、こうした観点は今も変わっていません」
「マスコミだけでなく、私たちの教育の中にもこうした極端な思考が見られます」と管さんは言う。例えば、世新大学には昔から校内の特定の空間に「コーナー学習」の場を設けており、以前から「英語コーナー」がある。「もちろん英語を学ぶのは良いことですが、では、なぜマレーシア語コーナーやインドネシア語コーナー、あるいは客家語コーナーやタイヤル語コーナーがないのか。私たちの学校には英語が母語の学生はいませんが、東南アジアからの華僑留学生は大勢いるのです」と管副教授は言う。