イノベーションと冒険
楊惠珊は琉璃以外の分野でも力を発揮しつつある。「透明思考」の空間や家具、食器、そして新民楽メンバーの衣装まで彼女がデザインした。店内のカウンターの燈籠型のスツールは、2008年にヴィクトリア&アルバート美術館の「クリエイティング・チャイナ」展に招かれて出展し、それがまさに上海の最先端のライフスタイルを表現するものとなった。
琉璃工房はクリエイティブ産業という概念のない時代に生まれ、ストーリーテラーとしての本領を発揮して文化の砂漠に少しずつオアシスを広げてきた。
「まず文化があり、次に創意、最後が産業です」と張毅はマイケル・ポーターの分析を引用する。文化は態度と核心的価値であり、信仰でもある。
クリエイティブ産業は冒険とオリジナリティに満ちているが、最初から計算づくでは文化とは言えないと楊惠珊は言う。
そして、一度飛びこんだら原則を貫く。「何事もやり抜く覚悟が必要で、少なくとも十年は続けることです」と言う。
最近は、世界の高級ブランドが巨額の資本をもって進出しており、台湾ブランドが大陸のデパートに出店する余地はないが、そうした中で琉璃工房だけは有名ブランドの中で埋もれることはない。「私たちが追求するのはレッドカーペットではなく、生の価値だからです。だからこそ多くの人が共感してくれるのです」と楊惠珊は言う。
楊惠珊の作品には花や魚がよく用いられ、秀麗で透明感がある。
上海新天地にあるレストラン「透明思考」は、琉璃芸術と生活の美学を融合させている。数百枚の琉璃ガラスで作ったカウンターと燈籠型のスツールが、東方の神秘的な空間を演出する。
米国の画家ジョージア・オキーフの生涯を表現した「清澈的你」。晩年は目が不自由になりながらメキシコで一人で暮らし、砂漠、花、動物の白骨を描き続けた。