古典プロジェクトのはじまり
古典とは何だろう。古今東西、書籍にはさまざまな分類があり、読書の好みや選択は人それぞれであるため、一言で古典と言っても、人によってその評価や見方は異なる。
「古典や名作は投票で選べるものではありません。民族や階層、性別などによって読後の感想は異なるもので、誰もがその本を読むようになって、その作品はしだいに古典となっていくのです」と話すのは現代作家で政治大学台湾文学研究所専任教授の陳芳明である。
春河劇団教学・アートディレクターの郎祖٨aは「さまざまな状況や年齢、記憶の中で、かつて読書によって火花が生じ、分かったような分からないような感覚ながら、人生の意義を体感したもの」と言う。年齢を重ね、記憶が深まっていくにつれ「古典」の定義も変わってくる。「書籍は海中のあらゆる生物に恵みをもたらす海のようなものです。生命力を与え、より遠く、深く泳ぎ、またより美しくしてくれるものです」と言う。
誠品書店董事長の呉清友は、書は人におのれの存在の意義を見出させる、内面と日常生活における重要な領域だと考える。彼が愛読するエーリッヒ・フロムの『愛するということ』と『人間における自由』は志文出版社が出し、今は絶版書になってしまったが、決して消えることのない名作である。「一冊の本が一人の人生を変えることもあります。読書を通して人生は豊かに華やかになります」と言う。こうした普遍的な価値を求めて、誠品書店は「ともに古典を読む」プロジェクトを開始したのである。
このプロジェクトは、誠品書店が2016年3月から3年連続で実施するもので、5段階にわたり、毎回出版社10社の編集長10名を招き、毎回100冊、合計500冊を推薦するというものだ。台湾の読者に良書を推薦し、読書エネルギーを蓄積し、それと同時に、この時代の「古典/名作」を形成しようというものである。
誠品書店ルート企画処シニアマネージャーの林萱؟oは企画の当初からかかわってきた。「出版社には古典・名作の意義を再び示す場として参加をお願いしました。大衆に迎合せず、主流マーケットとは異なる方向を示すもので、古典は時間の試練を乗り越え、知を求めるすべての読者を征服すると考えたのです。各出版社の編集長たちの慧眼と出版に対する強い意志がなければ、古典に触れる貴重な体験を得られなかったかも知れないのです」と言う。
推薦図書として新たにカバーもデザインされた。控え目にシリーズの統一感を出し、古典を読むという行為の品位を表現している。