1940~60年代生まれの人なら、当時大流行した葉宏甲の漫画『諸葛四郎』に登場する真平と四郎を覚えていることだろう。
これと同時期に、やはり大ヒットした『小侠龍捲風』の陳海虹や、涙秋(許幸修)、許貿淞といった漫画家が生まれ、台湾漫画は最盛期を迎えて時代を代表する武侠漫画が続々と世に出た。
しかし、1966年に漫画を規制する「編印連環画輔導弁法」が施行されると、台湾の漫画産業は初めて低迷期に陥り、1987年に規制が解除されてようやく新たなチャンスが到来した。
1980年代に入ると、敖幼祥の四コマ風刺漫画『烏龍院』がロングセラーとなり、林正徳の青春もの『Young Guns』、歴史とファンタジーを融合させ、台湾少女漫画の先駆けとなった游素蘭の『傾国怨伶』などの傑作が次々と世に出た。
これらの作品はその多様なスタイルとテーマが注目されて大ヒットし、さらに日本や香港でも発行された。『Young Guns』はアニメやゲームにもなり、第二の黄金時代を築いた。しかし、好況は長くは続かなかった。90年代以降にデジタルの時代を迎えると紙媒体は衰退し始め、また産業に断層が生じて堅固な基礎ができていなかったため、台湾の漫画産業は大きな打撃を受ける。
第三の黄金時代は来るか?
時代が変われば課題も変わる。出版市場の景気は以前ほどではないが、この十年、市場に突然「文化や歴史」を扱う作品が複数現われた。最初はAKRUの作品、2008年にストーリーマンガ大賞を受賞した『柯普雷的翅膀』だ。大航海時代、ヨーロッパの一人の青年が台湾に上陸し、中央山脈に深く入っていくという冒険の物語である。漫画不況の中で出版社も慎重に発行したが、思いがけず好評を博すこととなる。
続く2009年に『Creative Comic Collection創作集(CCC創作集)』が創刊された。日本統治時代の大稲埕の喫茶店を背景に当時の台湾博覧会を扱ったAKRUの『北白百画帖』や、台湾烏龍茶の父と呼ばれるJohn Toddと大稲埕の豪商‧李春生の物語を描いた張季雅の『異人茶跡』をはじめ、台湾の歴史や自然を素材とした作品を多数掲載した。これらの作品は完成度が非常に高く、市場でも大きく注目された。
さらに最近は、阮光民の『用九柑仔店』と『神之郷』の二作がTVドラマ化された。
また、2017年、2019年、2020年にはプロの漫画家への登竜門とされる「京都国際マンガ‧アニメ大賞」で台湾の作家が入選している。
2020年には日本の外務省が主催する「日本国際漫画賞」で、それまで中国や香港の作品が受賞していた金‧銀‧銅賞を台湾の3作品が独占した。
海外での受賞が相次いで国内市場も動き始め、出版社の間でも「台湾漫画産業のニューウェーブ」が到来するか、とささやかれ始めた。
『Creative Comic Collection(CCC)創作集』主編の温淳雅。