自発的な臣従
同じく考試院が統一して行うエンジニアや船員向けの「専門職業及び技術人員試験」(以下資格試験と略す)は、業務内容が公共の利益や一般の生命財産の安全に関るため、ライセンスがなければ業務を実施できず、受験生のキャリアに決定的な影響を及ぼす。
去年の資格試験の応募者数は19万4660人、受験者数は14万8996人であった。項目別の合格率は大きく異なり、医師国家試験が7割を超えるのに、弁護士試験では8%、ソーシャルワーカーは1〜10%の間を行き来している。試験対象となる職業は60種まで増加し、今後も増える予定である。
資格試験の性質は公務員試験と異なり、業務実施の資格で身分を示すものだが、職を保証するものではない。すべては市場のメカニズムと、その業種の環境によって決まる。
ただ、これまで考試院は合格者数を制限して水準を維持する方針で、論文問題で専門知識をテストし、受験生は法規を暗記し既出問題の練習に力を注いでいた。しかし現実を見ると、薬剤師や建築士など職業によってはライセンスが貸し出され、あるいはライセンスがあっても開業できない現象が見られる。前者は運転免許を借りて運転、後者は運転免許があっても運転しないのと同じで、どちらも試験と実務がかみ合わなくなっている現実を示す。
建築士の試験を見ると、建築学科の卒業生でも勤務10年後に僅かに10分の1が建築士の資格を有するに過ぎない。数年前には700人余りが受験したのに合格はわずか1人ということもあった。2002年、考試院はついに建築士試験を一発勝負から、専門科目6科目を3年以内に通過という方法に変えたが、それでも6年の平均合格率は7%を下回る。
淡江大学建築学科大学院を卒業した陳俊亨は、4年前に卒業した時に建築家としての誇りから試験勉強をしなかった。その結果、驚くべき低い点数を取ってしまい、ようやく試験は制度に臣従しなければならないゲームのルールだと気づいた。そこで会社を辞め、予備校に1年通いつめ、既出問題を練習した結果、最初に4科目合格、3年目にようやくライセンスを取ることができた。「試験の最高の境地とは、勉強する過程を楽しみ、予備校で詰め込む理論と実務とをリンクさせるコツを覚えることです」と彼は言う。
私たちは一生の間にどれだけの試験を受けるのだろう。試験は退屈で暗記重視だと嘆く前に、この社会が評価基準として「筆記試験」を過度に信仰していないか考えてみる必要がある。