良い縁を結ぶ国際結婚
「最初の勤務先の不愉快な経験から、二度と台湾には来るまいと思っていました。でも、家の事情で泣く泣くまたやって来たのです」と、ベトナム出身の范美幸先生は、台湾に来たばかり頃の苦労を語る。
「2001年の旧正月前に介護の仕事で台湾に来ました。まだ20歳前で体重は40キロしかありませんでしたが、毎朝早くから雇い主の経営するレストランを手伝い、食器洗いや掃除をした上に、体重が70キロもある脳梗塞のお婆さんの介護に働きました」そんな毎日に疲れ果て、契約満了前にベトナムに戻った。
ベトナムで働けると思ったのに、家に火事があって家族は困窮し、お金のために再び泣く泣く飛行機に乗り台湾に戻った。
「中国語も台湾語も話せましたが、今度の雇い主は客家の人だったので、客家語も学びました」と言う。生活のためにすぐに客家語を覚えたので、雇い主に気に入られた。半年後、雇い主はベトナムの家族が家を買えるように、気前よく10万元を貸してくれ、范さんは雇い主の信頼と思いやりに感じ入った。その後、雇い主はお見合いを勧めてくれたが、介護があるからとデートにも行こうとしなかった。そんな優しく義理堅い性格の彼女を雇い主はさらに気に入った。その2年後に縁あって雇い主の孫と結婚することになり、ついに幸せをつかんだのである。
現在は一男二女の母となった范さんだが、言葉に興味を持っていて、教育部が主催する「新住民の母語教師訓練講座」に参加した。小学校でベトナム語を教え始め、今年から望見書間で「楽しいベトナム語講座」を担当している。
范美幸さんは幸せそうに微笑みながら、ご主人がベトナム語で「ありがとう」と言ってくれると心温まるという。姑も、片言のベトナム語で家族に挨拶してくれる。
「以前はベトナム人花嫁と言われると、心が痛んだものですが、今では気になりません」と、彼女は文化の差異から無意識に人を傷づけることがあることを指摘する。だからこそ、より多くの人にベトナム文化を理解してもらい、文化の違いからくる誤解を解きたいと、范美幸さんは自信をもって話す。この目標は、望見書間が目指すところでもある。
望見書間を設立した林周熙。東南アジア出身の新住民のために、オープンで友好的な文化空間をもたらしたいと考えた。