見た目の良さが決め手
生産技術面で台湾は優れているが、弱いのは後工程で、これこそ農産物輸出の難しさでもある。収穫したパイナップルは、まず除虫処理を施す。パイナップルの害虫は果実にしっかり密着しているため、ブラシで強くこすった後に強い水柱で洗い流し、それから秤にかけ、外観の色や冠芽の長さ、傷などを見て選別する。収穫時の成熟度から鮮度維持、冷蔵、輸送までを、どうコントロールするかが一大課題なのである。
何希智主任は日本人から「おいしいかどうかは二の次で、見た目が第一だ」と言われるそうだ。箱の中で押されたり、適当に洗っただけで出荷したものは、外観が悪い。フィリピン産の2倍の価格で売るのだから、当然外観が重要になってくる。
米国のワシントン・アップルは40日もかけて輸送されてくるのに、色つやも歯ごたえもいい。鮮度維持が重要なのである。
パイナップルの他に、何主任は「ここには全台湾で最もおいしい冬バナナがあります」と言う。台鳳の内埔果樹園は大武山の麓にあり、標高200メートルで昼夜の気温差は10度以上に達するため、味の良い冬バナナが採れる。もちろん、台風が恒春に上陸しないことが条件となる。
バナナで恐いのは病気で、通常連続3回収穫した後に発生する。そこで台鳳公司ではバナナとパイナップルとパパイアの3種類を輪作し、病気の発生を防いでいる。
高品質で高価格
輸出のハードルは高いが、各種果物の国内価格が600グラム当たり平均3〜30元の間を変動しているのに比べると、輸出価格は安定している。パイナップルの場合、原価は12元、輸出価格が15元で、赤字になることはない。
「日本は注文の多い国で、その市場に入り込むのが難しいだけに、成功すれば大きな達成感が得られます」と話す台鳳公司農産事業部の宋広声マネージャーは、常に戦々恐々として、悲観と楽観の半々の気持ちで取り組んでいるという。
宋広声さんは、国の農業技術団の尖兵だった。かつて台鳳公司は政府の外交政策に協力し、72年から14年間、アフリカへパイナップル栽培の指導に行った。80年代には、台鳳公司はインドネシアへ行ったが、90年代のクーデターで撤収することとなった。98年には中国大陸の海南島への投資を計画したが、財務上の問題から実現しなかった。
「今の若者は途上国へは行きたがらないので、海外投資には人事面でのリスクも考えなければなりません」と宋さんは言う。
「台湾で農業をやる場合、土地の原価は東南アジアの20倍、人件費は10倍だということを常に頭に入れておかなければなりません。しかも、生産できる季節は東南アジアの半分なのです。これだけの原価をかけて日本市場を開拓するなら、品質は東南アジア産の何倍も良くなければなりません」と宋広声さんは、自分にも同業者にも言い聞かせている。