文学作品を音楽に
文学作品を音楽にするのが世界的な傾向となっている。2012年に苗栗県立国楽団と多くの音楽家によって演奏された『客家音楽史詩‧寒夜三部曲』もその一例だ。李喬による客家小説『寒夜三部曲』は、『寒夜』『荒村』『孤灯』から成る。日本統治時代の台湾で、歴史に翻弄される彭家と劉家三代の人生や植民政府への反抗を描いた作品だ。それを音楽ディレクターの黎俊平が曲にし、伝統音楽だけでなく西洋音楽のピアニストやチェリスト、声楽家などを招いて演奏した。
文学を音楽にする際の秘訣は何だろう。黎俊平は、音楽に客家の味わいを持たせるため、客家の山歌の特徴を音に表してみたと言う。「山での茶摘み歌は、向かいの山にいる仲間に聞こえるよう、長く遠く声を伸ばします。こうした微分音の響きをピアノで表現しました」『寒夜三部曲』を初演したルイビン‧チェンは「この作品を演奏するにはピアノの鍵盤88本すべてが必要でした」と言う。客家の山歌がいかに多様な音階の変化を持つかがわかる。
『寒夜三部曲』の1作目『寒夜』は、客家の人々の粘り強い不屈の精神を表現するため、どっしりと力強い音色のピアノを用いた。黎俊平は原作の小説を読んでこう感じたと言う。「土地への強い愛着を感じました。小説には、人はみな、へその緒が黒い大地につながっていて、たとえ緒が切れても土地とはつながっていると書かれています。ピアノは音域が最も広い楽器なので、人間の強い思いを拡大したり凝縮したりして表すのに適しています」。2作目の『荒春』は、日本統治時代に搾取されて苦労するサトウキビ農家の物語なので、テノールやアルト、子供の声によって農民の悲痛な境遇を表現した。
『寒夜三部曲』だけでなく、黎俊平のほかの作品でもよく台湾が素材となっている。プユマ族の聖山である都蘭山の曲もある。都蘭山の座標が北緯22.53度、東経121.11度なので、「22.53°N, 121.11°E-都蘭山」というタイトルにした。海外での公演でも台湾原住民について知ってもらいたいと考えるからだ。台湾の四季を描く際には、彼は菜の花を冬のテーマとして扱った。「台湾の冬は雪も降らず、さほど寒くありません。むしろ菜の花の広がる風景に暖かさを感じます」こうした観点は海外の聴衆の興味も引くだろう。
音楽鑑賞は絵画鑑賞に似ている。日本統治時代の台湾第一世代の作曲家や、民主化運動の高まりで台湾に重きを置くようになった作曲家、そして台湾をテーマに扱う現代の楽団と見てきたが、彼らの演奏は、まさに台湾の歴史を音の配列によって一幕一幕の物語として描き出すものだ。そしてそれが我々の心に流れ込んでくる。
江文也が1936年に作った管弦楽の作品「台湾舞曲」は、第11回オリンピック芸術競技音楽種目で受賞した。(劉美蓮許可)
陳泗治の代表作の一つ、ピアノ曲「台湾素描」は台南から台北までの車窓の風景を表現したものだ。