緑のニガウリの変化
全中和が苦労して品種改良を行なう目的は、食用だけではなく研究機関への提供もある。
国家科学委員会は2005年から2011年にかけて農業バイオ技術国家プロジェクトを実施した。台湾大学、中国医薬大学などの学術機関に山芋、花葉開唇蘭などの研究を委託し、漢方や健康食品開発を目指した。2006年からはニガウリも対象となり、血糖値や中性脂肪の改善と抗がん作用の研究が始まった。しかし、研究機関は漢方薬実験用のニガウリを市場で調達しており、品種や産地が安定しなかったため一定の効果が得られず、研究の有効性や信頼性に影響していた。
これはニガウリが他家受粉する作物で、農家では自分で種を残すため、品種が交りやすいからである。交雑を繰り返すことで、株の性質が変わり、果実の大小が不揃いになり、形も変化する。そこで花蓮農業改良場では、研究機関の要求に応じて同じ品種、同じ収穫期の安定した品質のニガウリを研究用に提供することとなった。
この国家プロジェクトの下で、学術機関はニガウリの成分を研究し、健康機能が確認された中から、46件の特許が申請されている。
例えば、国立屏東科技大学バイオ研究所の鄭雪玲教授は、10年の研究の結果、花蓮2号とこれに似た沖縄ニガウリのツルと果実から、トリテルペノイドサポニンの成分を抽出した。これを細胞やマウスで実験したところ、インスリン抵抗性の改善作用があることが分り、2型糖尿病の改善に役立つ健康食品の開発が考えられている。
慈済大学生命科学研究所の徐雪瑩教授は、ニガウリから抽出した成分を使ってがん細胞の研究を行ってきたが、特定の成分に、がん細胞の成長抑制効果があることが分った。しかし、予防は治療に勝るという通り、日常生活で緑のニガウリを食用とすることで健康維持に役立つので、がんも末期となっては遅いと言葉をつづけた。
国家プロジェクトの研究開発チームがあげた成果は、ニガウリの将来性を期待するに十分で、健康食品の開発に有力な品種は、経済作物として評価が高まっている。花改場の開発チームも、健康食品向けの品種改良に力を注ぐこととなった。
中でも、全中和のチームが2002年より栽培を開始し、2008年に品種の権利を取得した花蓮4号、および2010年に開発した5号は、外見は深緑で太く短く、表面のとげが鋭く、見た目は美しいとは言えない。しかし、見かけで判断するものではなく、食品工業発展研究所などの機関がテストしたところ、この二種のニガウリは健康食品の開発に向いていることが分った。
全中和によると、4号と5号はともに交雑種としての優位性を有していて、混血が純血に勝るという通り、生産量も栄養価も共に高い。

花蓮農業改良場の全中和・副研究員はニガウリの育種に力を注ぎ、その経済価値の多様な展開を可能にした。