照明を消し忘れたのは誰?
iENはプラットホームを通して顧客のエネルギー使用状況をモニタリングし、機動的な管理を行なう。当然、そのためには使用空間の各種設備に一つ一つセンサーやコントローラーを設置してセントラルプラットホームとつなぐ必要がある。
学校の場合、コントロールシステムと各教室の時間割をリンクさせる。午前10時から授業がある時、システムは9時50分に自動的に電源を入れて照明や空調をつけ、授業が終わると自動的に電源を切る。予定外で教室を使用する場合、使用者はあらかじめオンライン上で申請しておく。
さらにiENは、使用者の悪い習慣を「強制的」に変えさせることもできる。
例えば、小中学校で「一人当たりの水道使用量」や「一人当たりの電力消費量」を決めておけば、システムが毎月、建物ごとの各種使用量の統計を取り、学校はこれを参考に賞罰を決めることができる。この方法をオフィスビルに適用すると、退社時に照明や空調を切り忘れているエリアがあれば、システムが警備員に知らせて電源を切ると同時にそれらを記録しておき、省エネ習慣の徹底していない部門の指導に役立てられる。
工場では、iENはさらに大きな力を発揮する。電力系統「最適化」管理を例にとると、モニタリングシステムは顧客の実際の電力消費データを取り、そこから新しい合理的な契約容量を提案してくれ、さらに毎月の電力使用分布の詳細な分析と動態管理もしてくれる。例えば、一部の生産ラインを移動させるとか、電力料金の安い非ピーク時に分散させるなどといった提案がなされる。
生産ラインがフル稼働している時に、電力使用量が契約容量を超えて罰金を科されないよう、モニタリングシステムは各設備の電力消費量を精確につかみ、容量を超えそうになったら警報を発する。そして顧客があらかじめ定めておいた優先順位にしたがって、一部エリアの電力供給を停止し、絶対に電力を止めてはならないエリアの操業に影響が出ないようにする。
省エネの「誘因」に期待
また、工場の製造工程における省エネ効率はその設備(蒸気、空圧、機械など)のエネルギー効率と密接に関わっており、経営者も設備を変えれば効率を上げられることは知っている。しかし、設備を変えるだけでメンテナンスをしなければ、エネルギー効率はどんどん低下していくのである。
中華電信企業顧客部門のディレクター、王皋雄によると、一般にはメーカーが定期的に人を派遣して設備をメンテナンスするだけだが、長期間モニタリングしたデータを見ていないので、メンテナンスの技術者も、異常なエネルギー消費がないかどうか確認できない。iENで常にデータを取っていれば、その数値に異常が出た時に、すぐにそれをメーカーに知らせてメンテナンスすることができる。設備が故障する前に異常が分かるため、常に最良の状態を確保でき、エネルギー効率も高い状態を維持できる。
iENという先端サービスの費用は「システム構築」と「後続のメンテナンスと管理」の二つの部分に別れており、前者はモニタリング設備の数と設置ポイント数によって数十から数千万元までとなる。センサーや通信システムを月々レンタルすることも可能だ。後者の場合、多くは月々の料金を支払う形で、顧客のニーズに従ってメンテナンス期限を定める。
iENを打ち出して1年、今では苗栗署立病院、台北栄総病院、南投の暨;南大学、雲林科技大学、それに多くの小中学校や政府機関がこれを導入しているが、民間企業では政府の補助金がないため、まだあまり導入していない。
だが、これが普及しない根本的な原因は、台湾の電力料金が安すぎること(工業用は日本の48%、イギリスの88%)だ。省エネの誘因が不十分なため、iENもESCOもなかなか普及しないのである。
しかし、中華電信は今後を楽観視している。台湾ではここ3年、年間20億元以上の潜在的市場があるからだ。彼らは、政府の政策が変わるのを待ちながら、現在の一つ一つの機会をとらえて訓練を重ねている。台湾も地球も、もう待ってはいられないのである。