ふさわしい人材とともに
「台南紅椅頭観光倶楽部」は、質感を重んじる日本でも注目され、2018年「グッドデザイン賞」の地域・コミュニティづくり部門賞に輝いた。
成功のカギはふさわしい人材を見出すことだ。この2年、游智維は地方創生にも注目し、日本の多くの地方を訪ね歩いた。「自治体が民間からいかにパートナーを見出し、開放的な信頼関係を築くかがカギとなります」と言う。
どんな時も信頼関係を失うことはないと王時思は言う。公的部門のプロジェクト推進には審査日程があるが、游智維は常に協力するアーティストのために最大限の時間を確保する。時間に余裕があってこそ、感動的なものを生み出せるからだ。だが、プロジェクト執行にはリズム感も必要だと言う。この時、王時思は公的部門の立場から判断し、時間や経費の限度を決める。
Plan bの游適任が台東デザインセンターのパートナーに確定した後、彼は台東県の各部署を訪ねたが、どの部門の長も台東を深く愛し、常に台東のためを考えていることがわかった。
台東デザインセンターは自治体と民間のプラットフォームで、そこには行政手続に精通したメンバーもいて、それによって外部との窓口の役割を果たすことができる。同時にデザインセンターは民間の参画によってイノベーションの力を取り込まなければならない。そこで張基義は、県の建設、観光、文化、農業などの各部署での経験がある羅淑圓を副執行長に招いた。羅は会計審査部門と協議し、デザインセンターの調達案件をよりフレキシブルなものとし、プロジェクトによってさまざまな専門業者を統合し、デザインによる駆動という理想を実現している。「我々が求めるKPI(重要目標達成指標)は社会的影響力のある重要な企画案3件というだけで、企画の内容は空白です。過去の調達案件におけるKPI設定方法への挑戦でもあります」と羅淑圓が言う通り、政府や自治体の調達手続に精通した人にとっては驚くべき方法で、例えば「社会的影響力」の定義だけで大変な作業になったと張基義は笑う。「しかし、専門性の高いチームに力を発揮する空間をあたえれば、彼らは自ずと社会的な影響力を生み出すのです」と言う。これこそデザインセンターにふさわしいKPIと言えそうだ。皆の目標が明確になり、プロセスは行政と実施機関が話し合って決め、細部は専門チームが自由に力を発揮して社会的影響力を発揮していくのである。
全体の協力関係を游適任はこう表現する。プロジェクトオフィスは陸軍のように現地に足を踏み入れてニーズを理解する。Plan bは空軍のように急いで現場に人を送り、イノベーションと変化を起こす。この時、プロジェクトオフィスはそのまま進めるか否かを判断する。両者は恋人同士のように互いの気持ちを探り合い、火花を散らすこともあるという。
台東デザインセンターは、今年初めに台東県政府の名刺をリニューアルした。台東の海と山と空をテーマとし、また台東産の米やトビウオ、釈迦、三仙台、公東教会、熱気球などをシンボリックに描き入れ、台東のイメージを打ち出した。「県の名刺を新しくすることで、市民はすぐにデザインセンターが問題を解決しようとしていることに気付いてくれます。名刺は毎日交換するものなので、多くの人に台東の変化を知らしめることができるでしょう。これは台東がより多くの可能性を受け入れようとしていることを示しています」と游適任は語る。
ふさわしい人材を見出してともに前進する。王時思(右)と游智維(左)は台南が正確に認識されるよう協力している。