台南のフェスティバル
台南国際写真フェスティバルは2018年11月中旬に始まり、2019年4月まで開催される。こちらも公的部門が主催するもので、2024年の台南建城400年に向けての8年にわたる企画の一環である。
キュレーターの黄建亮は、当初、台南市文化局に依頼された時に一度は断ったが後に受けることとなった。黄建亮は常に「文化アイデンティティ」に関心を寄せており、台湾のそれは明確ではなく混乱していると感じてきた。外国と比較すると、アメリカは建国わずか200年余りの若い国だが、視覚映像が国家アイデンティティにおいて重要な役割を果たしている。台湾でも、この8年の計画を通して写真の文化的アイデンティティを確立できるかも知れないと考え、キュレーターの任務を引き受けることにした。
台南は昔から台湾の文化の都と呼ばれ、西洋の写真技術が最初に台湾に入ってきた地でもある。しかし、写真の歴史において台南は特別な位置にはないことから、彼らはまず「写真家に焦点を当てる」シリーズから着手することにした。
まず、台南を拠点に活動していた許淵富(1932-2018)である。彼は早くも1988年に張照堂によって写真家として取り上げられた。その『影像的追尋』に次のようにある。「60年代の台湾の写真家は、サロン写真と記録写真の分野に分かれていたが、その間で従来のいずれの技法にも安んじない若い人々が、構図や表現において独自のスタイルを追求し、より自由で鮮やかな視覚表現に取り組んでいる。南部の許淵富はそうした実践者の一人である」と。
許淵富の40余年にわたる写真人生は、白黒からカラーまで、記録写真から商業写真まで多様な題材を撮り、1960年代には日本の雑誌に投稿し、長年にわたって写真の教育と推進にも取り組んできた。その生涯は台南の写真発展史そのものであり、継承の意義がある。4月末、展覧会「許淵富に焦点を当てる」が蕭壠文化パークで開催され、台南の写真について考える第一歩となった。
台南写真フェスティバルは「鯤鯓顕影(鯤鯓のベールを取る)」をテーマとしており、11月にスタートする展覧会のキーワードは「台南」である。黄建亮は若手写真家の創作に注目しており、台南出身の陳敬宝、荘坤儒、張士飛を招き、台南文化の中で育った彼らの視点で台南を見つめることとした。「台南現場」では、台南をテーマに創作している作家の作品を集める。例えば楊順発の「地盤沈下」、黄建劉の台湾塩業の写真、張景泓が長年撮り続けてきた廟の儀式、伝書鳩を飼育する李立中の作品、さらに林柏樑、呉孟真、黄子欽などの作品を展示する。彼らはそれぞれ異なる形と切り口で台南を表現しており、そこには台南の過去と現在と未来が見て取れる。
「ひとつのプラットフォームとしての写真フェスティバルが写真全体に対する肯定であってほしいと願っています」と黄建亮は言う。彼はまた、展覧会では、さまざまなテーマやジャンルの作品を扱い、同じプラットフォーム上で対話が発生することを願っている。報道写真であれ、サロン写真、芸術写真であれ、どれもが写真フェスティバルにポジションを持ち、評価されるべきなのである。
黄建亮は、2018年は曾文渓以北の地域で、2020年以降はさらに台南市全体へと広げていくという8年計画を立てている。流れを確立して対話を生み出すことで、写真を通して自分たちの文化を肯定し、それとともに写真の生態系を形成していく。「生態系が形成されてこそ、まいた種が育ちます。容易なことではありませんが、チャレンジしなければなりません」
写真は一つの刺激であり、素晴らしい作品を見た時に自分の作品が良いかどうか反省できます。これが写真フェスティバルの教育面での意義と言えるでしょう——馬立群
自分史を自撮りで表現する江侑儀の作品「Face Post」。(高雄写真フェスティバル提供)
陳伯義が記録した、すでに地図上から消失した紅毛港集落。(高雄写真フェスティバル提供)
今後8年にわたる台南国際写真フェスティバルの蓄積を通して、台湾でも写真の文化的アイデンティティを確立できるかも知れません——黄建亮
許淵富が経てきた台南の写真発展史を振り返る「許淵富に焦点を当てる」展には、継承の意味が込められている。
ポリエステルで古いものを固めた黄子欽の作品は、人々の記憶を固めたものでもある。(台南国際写真フェスティバル提供)
張士飛の「 地5号」。台南出身の彼は、写真で台南への思いを記録してきた。(台南国際写真フェスティバル提供)
荘坤儒の作品「麻豆×HOME」。20年をかけて家族の変遷を記録し、時間の中で失われていくものを表現している。