ハイテクで変身
伝統的な土窯で、どうやって温度を制御するのだろうか。秘密は窯の上方から伸びる3本の金属線だ。研究チームは、窯内に温度計を設置し、それを傍らのコンピューターにつなげ、そこから送られる情報を工業技術研究院で監視制御している。陳靖賦は「焼きの最中は、15分ごとに1回測定し、温度曲線が基準通りか確かめます。そうしないと、竹炭は健康グッズなどに製品化できず、せいぜい農業用にしか使えません」
環境汚染のない所で育った竹を用い、基準に合わせて作った竹炭だからこそ、台湾優良農林規格CASの認証を受けられる。ハイテク技術を用いて伝統の竹炭製造を管理するのは、品質の安定だけでなく、台湾の竹炭製造技術の知名度を高めることにもなる。2005年の日本の愛知万博では、台湾は万博加盟国ではないものの、竹炭のハイテク技術の高さが認められ、台湾生体材料産業発展協会が招かれて参加、竹炭繊維や竹炭による海水淡水化装置など、台湾の研究成果が多く展示された。「世界初の竹炭電動車も披露しました。入場客は一日中乗って楽しめ、竹炭の驚くべき畜電力を示しました」と陳靖賦は胸を張る。
万博で注目を浴びたことから、竹炭関連分野の台湾の専門家たちは、アメリカ、日本、タイなど各国から招かれて技術を伝えることになった。陳靖賦も、外交部の外郭団体である国際合作発展基金会から中南米に派遣され、竹産業普及の指導に当たった。「かつて台湾の竹産業は、竹をそのまま製品化する一次加工産業だったので、人件費の安い中国大陸や東南アジアに取って代わられてしまいました。しかし今や台湾の竹炭は、ほかの国が競って学ぶ対象となったのです」と言う陳靖賦は少し誇らしげだ。
林建勲も、この10年余りの竹産業の変化を思い起こす。「最初は単に炭を焼いていただけです。こんな風に大学や企業が次々と加わってくるようになり、竹炭産業の領域がここまで広がるとは思いもしませんでした」。防臭剤、竹炭麺、水の濾過装置、竹炭繊維、洗剤、そして医療の人工透析にも用いられるようになった。山にあっては緑成す竹が、今や産官学連携によって、黒く輝くダイヤモンドになったのである。
竹炭は600度の高温で焼いた後、泥で封鎖して14日かけて温度が下がるのを待つ。
多くの人の努力の末、緑の竹林が黒いダイヤに変り、竹産業に新たな希望をもたらした。