最高峰と摩天楼
第2位の玉山にはさまざまな意味が込められている。「台湾という小さな島に標高3000メートル以上の山が100もあります。その中の3952メートルの玉山という東アジア最高峰は、小国の士気の高さを象徴しているかのようです」と鄭局長は言う。
実際、投票活動ではずっと玉山がトップだったのだが、最後に1万票の差で布袋戯に抜かれ、多くの人が驚いた。
玉山に9回も登頂し、携帯電話にも玉山の写真を使っている政治大学の戴宝村教授は、投票結果が残念だと正直な気持ちを語る。
戴教授は、玉山の壮麗さは世界でも貴重なものだと言う。台湾および東アジアの最高峰であるだけでなく、ブヌン族にとっては「聖山」であり、植民地時代の日本人は「新高山」と崇め、しかも玉山は多くの河川の源流で、近年、台湾の文芸界では「玉山学」がブームになっている。ただ残念なことに、半世紀にわたる戒厳令の下で高山登山が禁じられてきたため、多くの人は山に親しみを感じておらず、そのために2位に甘んじたのだと考えられる。
戴教授は、今回の投票活動は国民の自信と自覚を示すものだと考えている。台湾人が「我々は玉山の子だ」というアイデンティティを持てば、そこには自然や国土への深い思いが込められ「玉山は台湾領土の代表」という意味がさらに人々を感動させるものになる。
しかし「投票は終わり、やり直すわけにはいかない」と戴教授は残念そうだが、それでも梨山七家渓に生息する希少な「サクラマス」が強敵を破って5位に入ったことは喜ぶに値すると言う。
第3位に入った、世界で最も高い台北101ビルにもさまざまな意味がある。101は1990年代の初め、台湾経済が最も勢いに乗っていた時に計画され、建設中はアジアの金融危機や台湾の景気低迷などの衝撃を受けた。こうした経緯から台北101は台湾経済の粘り強さと活力を示しており、今では華人圏で最も盛大な年越しの花火でも知られ、台北の楽しさと台湾の活力を象徴している。
一部の学者が、高さのある玉山と台北101を「国家の権威と競争力の象徴」と見るのに対し、最近のニューヨークタイムズの旅行面は、台北101とその周辺の信義計画区を若者の文化を代表する「消費天国」と位置づけて紹介した。101についても、さまざまな解釈が可能なのである。
玉山は東アジアの最高峰であり、台湾人の多くが一生に一度は登りたいと思っている心の故郷だ。写真は玉山の春を彩るニイタカシャクナゲ。