具体的政策はどこに?
台湾でも、90年代から大勢の外国人配偶者が入ってきているが、出生率の低下は止まらない。
2003年の場合、結婚したカップル3.1組に1組が、外国人または中国・香港・マカオの人との結婚で、新生児7.5人に1人が外国人または大陸出身の親を持つ。
現在までのところ、外来の移民を母親に持つ子供は約21万人で、ベトナム人女性の出生率は1.5人、中国大陸出身女性の出生率は0.9人で、台湾人女性の平均1.2人より低いのである。
林万億教授によると、台湾人と結婚するベトナム人女性と比べて中国大陸出身の女性は年齢がやや高く、また長年の「一人っ子政策」のために、台湾人女性より子供を産む意欲が低いという。
我が国の出産奨励策は、スローガン止まりの面があり、高齢者補助金と同様、各自治体の財政状況に左右されて統一されておらず、出たり出なかったりする。今年最高の優遇策を出したのは新竹市で、子供1人目には1万5000元、2人目には2万元、3人目には2万5000元を出した。高雄市旗津区は汚水処理場からの還元金があり、1回の出産に1万元の補助金を出した。台北市では3人目以上の子供が小学校生の間、毎学期500元を出している。
人口政策について省庁間の意見は一致しておらず、出生率低下について、コンセンサスが得られていない。その影響で、移民受け入れを緩和するのか規制するのか、託児や高齢者ケアは国の責任か家庭の責任か、などの問題についても結論が出ていない。今年、林教授の働きかけでようやくコンセンサスが得られ、来年6月に人口政策白書が出される。
安心して産める環境を
今年7月に採択された人口政策綱領は「出生率低下の速度を緩める」という目標を立てている。林万億教授は、政策は人の考えを変えることはできないが、出産と育児に有利な環境を作り、産みたいと思う人の負担を軽減することはできると言う。
そのためには、まず職場での待遇を変える必要がある。約2ヶ月の産休の間、雇用主が給付していた給与を労働保険で支払うようにすれば「妊娠したら解雇される」という状況を改善できる。
また、2年間の育児休職は、給与が得られないので利用者が少なかったが、将来的には社会保険で補助金を出す考えだ。所得の低い家庭には、2歳まで政府が託児費を補助する。この他に、託児や放課後保育などの制度やサービスも向上させる必要がある。
人材の質の向上という面では、より根本的な対策を採っていく。5年後から小学校は1学級29人となり、中学も小学級制になり、将来は義務教育12年制を目指す。林万億教授によると、これらの政策実施には大きな予算が必要なので、国会でも激しい議論になるだろうが「将来の国力」のために必要な投資だという。
産むか産まないかは個人の自由だが「産みたくても不安で産めない」というのは社会の責任だ。これらの不安を解消することこそ、人口政策の目標なのである。