文化をもって台湾を世界に
輔仁大学は台湾で最も早く「国際ファッション工科大学連盟(IFFTI)」の加盟校となり、シスター‧マリタは学生たちにはファッションの世界的な流れを意識してほしいと考えている。「衣服はものを語ります」と言う通り、布を織ること自体が一つの言語なのである。
「すべてのデザインに文化的なベースがあります」輔仁大学織物‧衣類学科で学んだ学生たちは常に世界のファッション業界から高く評価され、数々の賞に輝いてきた。2020年、周裕穎(ジャスティン‧チョウ)のブランドJUST IN XXは6度目のニューヨーク‧ファッション‧ウィーク出展を果たした。レトロなパターンに現代アートの色彩を載せ、エコロジーの概念とともに台湾の良さを世界に知らしめた。この他に、彫刻のようなニットで世界を驚かせたヨハン‧クー(古又文)は、東京からロンドンへと活躍の場を広げ、詹朴(Apu Jan)や高元龍らと衝突しつつ、エコロジーファッションの流れをリードしている。
多くのファッションデザイナーを育ててきたシスター‧マリタだが、環境を非常に重視しており「常に、浪費していないかどうか、自らを振り返っています」と言う。そして学生や消費者には、闇雲に流行を追って資源を浪費すべきではないと呼びかける。
輔仁大学では1995年9月の新入生から必修科目「大学入門」を設けた。シスター‧マリタもその発起人の一人で、自ら教鞭に立った。多様化と物質の発展が強調される現代において、新入生が順調に適応し、総合大学において道徳と知恵を兼ね備えた全人教育を受けてほしいと考える。
「ここでは垂直統合型の教育を行なっています」と話すのは、ずっとシスター‧マリタに師事し、織物‧衣類学科第一期卒業生で、今ではシスター‧マリタの片腕として学科主任を務める何兆華だ。「学生たちは糸や編織から織物‧衣類に触れていきます」と言う。学内には織りや編み、染色プリント、金属加工などあらゆる設備が揃っており、素材デザインから服飾デザイン、マーケティングまで、業界のニーズと直結した全方位型の人材を育成している。
テキスタイルの応用範囲は非常に広い。シスター‧マリタが主宰し、1996~98年にかけて業界と協同で完成させた圓山大飯店の客室デザインは、2000年に「大学教師‧産業界合作研究開発卓越奨励賞」を受賞した。
「総統府のレセプションホールである緑庁と晴庁の内装の織物も、すべて私たちがデザインしたものです」2003年、シスター‧マリタは、台湾のチョウやイチヨウラン、ユリ、サンケイなどの動植物をモチーフにした絨毯「百福地」をデザインして緑庁の一大特色とした。その2年後には晴庁のデザインを請け負い、四方を海に囲まれた台湾の特色をモチーフに、絨毯からカーテン、ソファーのファブリックまでをデザインし、スケールを感じさせる空間を創り出した。