大地とつながるブランド
微熱山丘が蜂蜜カステラより先に新商品を発売したのは2012年、パイナップルケーキの副産物であるパイナップルジュースだけである。
もう一つ、知られていないのは「天使ケーキ」で、これは慈善団体だけが販売している。
小麦粉と卵白、パイナップルジュース、パイナップルの芯で作った天使ケーキは、微熱山丘のブランドだが、店舗では扱っていない。
許銘仁は、普仁青年関懐基金会の董事長を辞した時、基金会の財源を確保すると約束し、天使ケーキを生産して販売を慈善団体に任せることにしたのである。ただ慈善団体の販売力は店舗ほどではないので、「微熱山丘で販売し、その利益を寄付した方がいいのではないか」とも考えている。
許銘仁は、今後は2~3年ごとに新商品を打ち出したいと考えている。「新商品の難しさは、その商品の定義です。ブランドの精神にかない、しかも大地とのつながりが必要なのです」と許銘仁は真剣な面持ちで話す。
そこで、彼は外部の力を借りて微熱山丘を絶えず向上させようとしている。海外の著名なパティシエに工芸や配合を学び、それを消化して台湾の要素を加え、自分たちの商品を作りたいと考えているのである。「老職人が長年にわたって磨いてきた工芸には高い価値がありますから」
以前はエレクトロニクス業界で働いていた許銘仁は、ブランド経営の経験はなかったが、最初から成功する予感があったと言う。「台湾ではブランドの確立に力を注ぐ企業は少ないので、この方針でやれば、目につきやすいと考えたのです」と言う。
店舗のデザインも「きらめく陽だまりの丘」というブランドイメージに呼応している。写真は東京表参道店。