アジアの強敵と戦う
国内市場が振るわないという「内憂」の他に、近隣の強敵という「外患」もある。
巨大な市場を持ち、漫画の長い歴史を持つ日本では、年間の漫画の生産高は60億米ドルを超え、その魅力は世界中の青少年を魅了し、世界公認の「漫画王国」である。ニューヨークタイムズは以前、全米の年間図書小説売上3億3000万米ドルのうち、日本の漫画が2億500万を占めると報じた。
日本の漫画は技術面で非常に優れているだけではなく、正統の高等教育も漫画産業を支えている。京都精華大学は2001年にマンガ学部を設立し、漫画を文化として学術的な研究の対象としている。漫画家を志す者はマンガ学科で学べる他、ストーリー創作や編集を学ぶマンガプロデュース学科もある。著名漫画家の竹宮惠子が学部長に招かれ、実務と学術の両面から漫画文化資産の蓄積と向上に取り組んでいる。
日本では「漫画による町づくり」も盛んだ。兵庫県には、『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』で知られる漫画の神様――手塚治虫の記念館があり、1994年のオープン以来、毎日平均800人が見学に訪れている。入口を入ると、手塚治虫の漫画キャラクターがハリウッドスターのように地面に押した手形があり、ファンは思わず会心の笑みを漏らす。
鳥取県の境港市は小さな町だが、『ゲゲゲの鬼太郎』の著者・水木しげるの故郷で、そのことが最大の観光資源となっている。交番や店の看板からマンホールにまで、目玉おやじやねずみ男など、漫画に登場する妖怪たちの姿が見られる。境港には毎年1000万を超える観光客が隣りの米子市から「鬼太郎列車」に乗って訪れる。
中国大陸や韓国、マレーシアなどの政府も最近は漫画・アニメ産業を重視し始め、各部門を動員して予算を投じ、国内産業を発展させようとしている。
中国大陸では、2004年から政府文化部が年間9億台湾ドルを漫画産業の育成に投じ、各地の大学に関連学科を設けている。さらに杭州をアニメ・漫画の首都とし、クリエイティブ人材の高待遇で招いている。台湾の人気漫画家である蔡志忠や朱徳庸なども招かれ、西湖の畔の一戸建てのアトリエで創作に専念している。
また、杭州市は2009年に13億台湾ドルに相当する資金を投じ、白馬湖区に朱徳庸ユーモア博物館や中国アニメ・漫画博物館、漫画スタジオ、ホテルなどを建て、さらに15平方キロに及ぶクリエイティブパークを建設しようとしている。
韓国政府も220億台湾ドル相当の資金をアニメ・漫画産業の育成に投じ、アニメ・漫画産業を減税対象とし、若い漫画家には兵役を免除するなどの優遇策を打ち出している。
各国が漫画・アニメ産業に野心を抱いているが、台湾の優位性はどこにあり、どう対応すればいいのだろうか。
第1回金漫賞で二つの大賞を受賞した林珉萱。左はその作品『年上年下』、上は自画像。