海のために力を合わせる
望海巷海湾の広さは全体で250ヘクタールあるが、基隆市はまず域内の15ヘクタールを先行モデル地区とした。これに成功したら、しだいに広げていく方針である。だが、大海原の中の15ヘクタールといっても、完全禁漁にするのは容易なことではなかった。
現在、海洋科技博物館の副館長を務める林青海は、基隆の漁師の家に生まれ、かつては基隆市産業発展処の処長も務めた。幼い頃から正浜漁港に連なる漁船を見てきた彼は、30年前に魚の取引をする業者が一日で100万元の売上をあげるという繁栄ぶりを目にしていた。その当時に比べると、今は漁業資源が枯渇したため漁業が著しく衰退しており、海洋保全の必要性を強く感じていた。穏やかに話す彼だが、海洋保全に対する信念は固く、産業発展処の処長在任中にも、これを積極的に推進していた。
しかし、一部の公務員の意思だけではそう簡単には進まない。「こういうことには、大勢の人の力が必要です」と言う。彼らは6年にわたって漁業者を説得し、話し合いや説明会の場を幾度も設けてきた。これを通して海に対する地元住民の思いや誇りを呼び覚ますことで、少なからぬ漁業者が、海巡署とともに、違法漁労を取り締まる「環境保全艦隊」を結成することに同意した。また、台湾海洋大学や海洋科技博物館などの機関は科学的データを提出し、稚魚の放流といった活動にも協力した。さらに「ビーチクリーン活動」を行なってボランティアや漁業者とともに海洋ごみを収集し、市民参加の機会を通して環境保全意識と一体感を高めていった。
このほかに、基隆市政府も善意を示した。沿岸500メートルの範囲内での刺し網漁を禁止する時には、刺し網漁の漁具を回収する際に予算を取って補助金を出し、漁業形態の転換を奨励した。さらに幸いなことに、さまざまな措置が議員や民意代表の支持を得ることとなり、現地メディアも大きく扱ったため、総合的な効果を上げることができたのである。
このように、海洋保護区の設定においては、基隆市、基隆海洋大学、漁業者、ボランティア、そして地元市民や民意代表、メディアまで、産官学研のさまざまな部門の人々が一体となり、見事な成功を勝ち取ったのである。
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潮境保全区の推進が成功したのは、地元漁業者の支持が得られたからで、漁業者は海巡署とともに海域の見回りもしている。