海に全員集合
養殖池には、ルリスズメダイ、ロクセンスズメダイなどが多い。パイナップルによく似たマツカサウオは「旺来魚」とも呼ばれる。カレイは砂の中に隠れれば保護色で見えなくなる。拳骨のようなマルソデカラッパは獰猛なので、小魚が隣に逃げられるよう、養殖池の底に秘密の抜け穴がある。
次は校内の一角にある大海に面した東北角自然センターだ。ここには数百種の魚の化石、エビやカニの標本があり、より深く学習できる。標本はいずれも提携先の宜蘭県のカニ博物館からのもので、やはり父兄が捕まえた変わったカニと交換して得たものだ。
「和美小の面積は全国で最小ですが、プールは全国最大です」張伯瑲;校長は、学校のすぐ横にある太平洋と東シナ海こそが同校自慢のプールなのだと誇らしげだ。
毎年、新学期が始まると、校長は新任教師を連れて龍洞湾の海に入り、海の世界を解説する。子供たちは専門コーチの指導で、国際レベルのダイビングエリアやロッククライミングエリアなどで、台湾で唯一の学習体験をする。
最近は郷土教育が盛んだが、多くは教室内での活動に留まり、生徒の実際的な体験は少ない。だが和美小は週に1回、体験学習を行い、成長段階に合わせたコースで勇敢な海の人間になれるよう訓練していると張校長は言う。
最も特色のある海洋教室コースでは、低学年は学内の海水養殖池や東北角資源センターの見学、潮間帯での特殊な動植物の観察により海洋観察記録を作成する。中学年では釣りやダイビングを学び始め、水に慣れた高学年は海の中から海洋の特性を知り、潮の変化を観察する。
また龍洞岬ならではの地形にある和美小には「自然学習歩道」が整備されており、生活に密着した漁村文化を学ぶコースもある。
自然歩道コースでは、龍洞湾の地理や気候、特有の岩石や浸食地形などを知り、東北角の海岸地形と多様な生物について学ぶ。龍洞湾の「四稜砂岩」が3500万年の歴史を持ち、高い硬度を有していると知れば、国際レベルのロッククライミング場とされる理由も理解できる。和美小のもう1つの特色はロッククライミングだ。
照り付ける太陽の中、ロッククライミング協会のコーチの指導の下、生徒はヘルメットを被り命綱をつけて、順番に2階建てほどの高さの険しい壁に挑む。下りる時、体重を後にかけず壁と直角に下りると、体が左右に揺れてしまう。下で見守る他の生徒は「足を開いて体重を後に」と注意する。恐くて登れない女子生徒には「今年で卒業だから最後のチャンスだよ」と教師が励ます。こうして全員が岩壁を登りきるのだ。
「この切り立った岩壁は、以前は子供が近寄れない場所でした」と言うのは張伯瑲;校長だ。親は事故を恐れ、子供をこの天然の岩場に行かせなかった。だが張校長は、岩登りやダイビング、海岸での魚や貝の捕獲、テングサの採集、魚釣りはもともと地元の生活のすべであり、子供たちに正しい知識と技術を教え、山や海に親しめるようにこそすべきで、避けてはならないと考えている。
中学年の釣りの授業で、学校は生徒にライフベストや滑り止めシューズの着用を指導している。ここでは釣り客の滑落事故が絶えないからだ。今年3月、地元のベテラン漁師も滑落して他界し、人々を悲しませた。
毎年夏になると、和美小学校の海上卒業式が行なわれる。子供たちにとっては忘れられない誇らしい思い出である。